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児童虐待

児童虐待とは

児童虐待は、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4種類に分類されています。この4つのいづれもが、親などから支配やコントロールを受ける、個人の尊厳を欠如させる、自由を与えない、人権侵害、兄弟姉妹間の不平等という要素を含んでいます。

 

虐待は暴言、暴力、無視するなどの行為によって行われます。虐待行為が家庭の中で習慣化してしまい、社会やコミュニティとの接点を持てずに家庭が孤立化した後、心と身体に強い影響を及ぼすこともあり、早期発見と親子双方への安全な場所の提供が欠かせないかもしれません。

 

そして、虐待行為という自分ひとりではコントロールできない怒りの発作を治療しなければ、その親子関係は加害者(親)と被害者(子)にすり替わってしまう結果となってしまいます。親・子への心理カウンセリングは不可欠かもしれません。 

 

<身体的虐待>

殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する等。

 

<性的虐待>

子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする等。

 

<ネグレクト>

家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない等。

 

<心理的虐待>

言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う等。

 

                  
(出典:厚生労働省公式ホームページ「児童虐待の定義」) 

 

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虐待の日常化(「しつけ」という道徳的言葉に置き換えられる「虐待」) 

アメリカの心理学者マーティン・セリグマンによると、人は抵抗も回避もできないストレスを含んだ環境に長期間生活すると、不快な状況から逃れようという行動すらとらなくなると述べています。M.セリングマンはこれを「学習性無力感」と名付けています。

 

虐待の起こる家庭環境で生活をする子どもやDV被害者は、「学習性無力感」を誘発し続ける環境の中で抵抗する意欲を失い、虐待を自然なこととして受け入れてしまいます。虐待の加害者(親)も被害者(子)も危険な環境を逃れ、心身の安全を確保した段階になってはじめて、「しつけ」と「虐待」がすりかわっていたことに気がつきます。 

 

・被虐待児症候群
(Batterd Person Syndrome) 

アメリカの小児科医C・ヘンリーケンプ博士は小児の身体に通常では見られない外傷が多数繰り返して見られることを被虐待児症候群(Batterd Person Syndrome)と呼び、以下の項目が当てはまるとしています。 

 

  • 3歳以下であることが多い
  • 子どもの健康状態は平均以下である。皮膚が衛生的でなく複数の軟部組織の損傷、ネグレクトや栄養不足がある。
  • 医師に語った内容と親が語った内容が一致しない。
  • 硬膜下血種が多々見られる
  • 多数の骨折箇所があり、それらは回復段階にある。

 

被虐待児症候群(Batterd Person Syndrome)は、人生全般に恐怖を感じている状態が4週間以上続いている、暴力、望まない性行為、隔離などの脅威によってコントロールされている、自分の体に嫌悪感がある、性行動に問題を持っている等の特徴があります。 

虐待が原因による精神疾患 

虐待行為は、複雑性PTSD障害不安障害解離性障害、境界性パーソナリティ障害、発達障害などの精神疾患の原因になるといわれています。これらの精神疾患が重複して生じることが多くあります。上記の精神疾患の中でも複雑性PTSDは虐待体験のトラウマに着目した精神疾患です。 

 

・複雑性PTSD障害

家庭内での虐待体験など複雑な体験によってトラウマに支配され、感情コントロールができない、解離症状、身体愁訴、無力感、絶望感、恥などの症状 があらわれ、日常生活を困難にします。世界保健機関 (WHO) が発行する疾病及び関連 保健問題の国際統計分類(ICD) では、第11版において初めて診断基準として記載された精神疾患です。 

虐待と愛着形成について 

子どもは母親との間に「安全基地」を築き、親子の関係の中で自分は特別であることを感じながら心を安定させます。社会という外界で恐怖や不安を感じるようなことがあっても、「安全基地」の機能が働いて、自尊感情や自己肯定感をもって日常生活を送ることができます。こうした愛着形成は他人と母親を見分ける生後6か月から1歳半に臨界期を迎えます。

 

親が虐待という発作的な怒りに操られてしまうと、親子関係で「安全基地」を築けずに不安定な愛着を形成してしまいます。子どもは親を求めると同時に恐怖や不安、怒りを感じるアンビバレントな精神状態になってしまいます。自己否定感や罪の意識を感じたりします。

 

また、子どもの行動に反応がないと思っていたら突如激しく泣き出したり、怒り出したりする無秩序な行動をとるようになります。猜疑心によってだれにも愛着を示さなくなる場合と誰彼構わず愛着行動を見せる場合の愛着障害があります。 

 

また、精神疾患や発達障害のある養育者が子どもへのコミュニケーション手段として、虐待やネグレクトをしてしまう場合あり、愛着形成を不安定にしてしまう原因のひとつとされています。 

虐待が原因による精神疾患
(DSM-5)

・反応性アッタッチメント障害/反応性愛着障害(抑制型) 

大人の養育者(親)に対する子どもの反応が抑制(遠慮がち)されている。苦痛な時でもその子どもは安楽(楽しみ)を求めない、あるいは反応しない、したとしても最小限の反応しかしません。陽性感情(喜び、楽しみ、安堵など)は制限され、他者との交流や情動反応(感情的なやり取り)が乏しい。養育者が威嚇していなくても、説明できないいらだたしさ、悲しみ、恐怖を感じます。自閉症スペクトラムの診断基準を満たさないことと定義されています。

 

こうした子どもは養育環境下で、愛情、安楽、刺激という情動欲求が養育者によって満たされず、母性剥奪や社会的ネグレクトを経験しています。里親による養育者の度重なる交代が原因で、安定したアタッチメントを形成できなかったり、児童施設で子どもが10人に対して養育者が1名といった関係が、各々の子どもへの特別な対応が不十分が選択的アタッチメントの機会を制限されたりしています。 子どもの年齢は少なくとも9か月であること、障害が5歳以前であること、障害が発生してから12か月以上であることされています。 

 

 

・脱抑制型対人交流障害(脱抑制型) 

見知らぬ大人と積極的に交流してしまいます。言葉づかいや行動、身振りが過度に馴れ馴れしく、どこか見知らぬ場所にひとりで行くような状況でも、大人の養育者(親)を確認しません。注意欠陥・多動症のような衝動性が特徴とする行動様式に限定されず、その愛着行動は脱抑制的で見境がありません。子どもの年齢は少なくとも9か月であること、障害が発生してから12か月以上であることとされています。 

 

 

・心的外傷後ストレス障害(PTSD) 

他人に起きたことも含め、極度に不快な心的外傷となる出来事を体験あるいは遭遇、暴露されることで以下の症状が生じます。 

  • 無謀なまたは自己破壊的行動
  • 過度の警戒心
  • 過剰な驚愕反応
  • 集中困難
  • 睡眠障害(こどもの場合は内容のはっきりしない悪夢)
  • 6歳を超えるこどもの場合、心的外傷体験を再演する遊びを繰り返す。
  • 心的外傷体験と同じように行動する解離症状
  • 離人症
  • 現実感消失
  • 心的外傷の出来事が再び起こっているように感じるフラッシュバック

虐待による心と身体への影響 

虐待行為が長期間に及ぶと、虐待を受けた人は「学習性無力感」が日常生活全般に影響を及ぼすことで生きることに対する希望を失い感情は鈍麻し、危険に対する警戒感すらも薄れてしまいます。精神面では、人間不信、自尊感情の低下、罪悪感、不安、抑うつ、あきらめ、安心感の喪失などが生じて生きづらさを感じてしまいます。 

 

身体面では、免疫力の低下が生じて、様々な身体疾患(アトピー性皮膚炎、風邪をひきやすい、腫瘍等)が現れます。長期間の虐待による脳への影響も深刻で、虐待によって脳萎縮が生じるという報告もあります。虐待トラウマを抱えた子どもたちの脳機能の低下は、発達障害に似た症状を伴うため診断の見極めが難しい場合があります。

虐待の報告件数について

厚生労働省の報告によりますと、2020年度、18歳未満の子どもが親などの保護者から虐待を受けて児童相談所が対応した件数は全国で19万3780件にのぼり、統計を取り始めた平成2年度以降増え続けています。 昨年度は前の年度より3万3942件増加し21.2%増で過去最多を更新しています。 

  

 虐待の内容は以下のとおりとなっております。 

 

①「心理的虐待」で10万9118件(56.3%) 

②「身体的虐待」が4万9240件(25.4%) 

③「ネグレクト」が3万3345件(17.2%) 

④「性的虐待」が2077件(1.1%) 

虐待の世代間連鎖への気づき

「家族」や「家庭」という言葉から、多く人は「あたたかさ」、「ほっとできる場所」などを思い浮かべるのではないでしょうか。「家族団欒」という言葉があるくらいですし、他人や知人と一緒にいるのとは異なる空気を家族は持っています。このように家庭空間には強い独自性や個別性、密室性があり、ある家庭を訪問をするとその家のしきたり、食事の味、家のにおい等があります。知人宅にお邪魔して、自分の家とは本当に違うと実感される経験は、皆さん、お持ちかと思います。また、外ではできないけれど、家の中や自分の部屋であれば、やっても文句を言われないことが必ずあるはずです。この部分が家の密室性の特徴です。 その家族の独自性や密室性は、巌の如く強度かつ頑固で、なかなか他者が変えようとしても変えられないものです。 

 

お子さんを愛したくても難しくなってしまわれる親御さんは、心の奥底で常に怒りにとらわれ、意識では聞き取れない怒りの反射の声によって操作されてしまいます。一度覚えた自転車の運転を忘れることができないように、からだは例えばこんな反射の声を聞いているのかもしれません━「俺は殴られて育てられたんだ」、「わたしは勉強を頑張っても無視され続けたんだ」と。 

 

お子さんを愛したくても難しい親御さんの特徴として、ご自身もまた「あの親のようになりたくない」と強く思い努力をされて来られても、ご自分の幼少期を思い起こさせるお子さんを前にした際、親御さんご自身の「親の着ぐるみ」を着たような状況になってしまうのです。

 

「しつけ」という形で上の世代の大人たちから受けた影響を、親御さんご自身も抱えていらっしゃるのです。お子さんを愛したくても難しい親も大人たちのひとりである養育者(父、母)から、苦しみを背負わされてきた筈です。その影響が世代間連鎖として、下の世代であるお子さんに如何ともし難く出てしまう事は良くある事なのです。

 

その世代間連鎖によって大切なわが子への、怒りがコントロール出来ない状況で罪悪感をぬぐえず自己否定の毎日で苦しんでいるとしたら、あなたの成育歴をふり返り、その「発作的な怒り」を食い止める治療をしてゆきたいと思っております。虐待の世代間連鎖をご自分の代で止めていけるのです。

「子どもを愛したい親」の
カウンセリング

長年、家族問題を専門とした相談を承って来ました。

その中で「トラウマの世代間連鎖」の状況を多く拝見して来ました。

 

「トラウマの世代間連鎖」の中で、虐待を受けた人は虐待を受ける人になるか、一方虐待をしてしまう人のどちらかになる場合があります。それだけこの問題は、上の世代を通じ連鎖してしまうのです。

 

実際ケースでは、本来子供を愛したいのだけれど、ご自分がトラウマを受けていた年齢のお子さんを前にした時、ご自分の幼少期のトラウマが誘発され、それが「発作的怒り」となってしまい子供に出てしまう事があります。親御さんご自身が抱えているトラウマにスイッチが押されてしまって、「発作的怒り」となってしまうのです。

 

また親御さんご自身が、機能不全家族の中で幼少期から生きて来られる結果から、親としてのロールモデルがいない状況の中でお子さんに一生懸命に接している場合があります。

 

そして親御さんご自身が虐待を受けて成長して来られると、幼少期からのトラウマの問題を長期的に受けてしまっている状況となります。

いわゆる複雑性PTSDの問題を抱えてしまっているのです。

 

複雑性PTSD の問題を抱える事によって、家庭内での虐待体験など複雑な体験によってトラウマに支配され、 感情コントロールができない解離症状、身体愁訴、無力感、絶望感、恥などの症状 があらわれ、日常生活を困難にしてしまいます。

 

親御さんご自身がこれらのトラウマの問題や症状を抱え、かつご自分のトラウマを刺激されるお子さんの姿を毎日見続ける事は、相当な苦しみと忍耐力を抱えながらやっていらっしゃる事と思われます。また当相談室のこちらの記事をお読みになっていらっしゃっておられるのは、それだけ「お子さんを愛したい」、そして「ご自身も愛したい」という強いお気持ちの表れだと思われます。

 

親御さんご自身がトラウマの問題から解放されていかれますと、自然とお子さんとの関係も楽になって来られます。それは世代間連鎖によって受けたトラウマの影響を受けなくなるからです。そして本来は「お子さんを愛したいけれど愛せない」状況から解放されて行きます。

 

当相談室では、過去の虐待によるトラウマの問題について効果的に、かつ短期に解放されるFAP療法を用いご提案をさせて頂いております。親御さんご自身のトラウマの問題から解放されるにつれ、お子さんとの関係が楽になって来られます。そして「家」が自然と穏やかな安心感のある場となっていきます。

 

「家」が大切な安全基地として存在し、家族メンバーが互いに一体感と安心感を感じられる様になります。

 

●カウンセリングをご希望の方は、こちらをご確認下さいませ。

虐待サバイバーと複雑性PTSD

虐待サバイバーの方々の多くは、世界保健機関(WHO)が発行するICD-11の複雑性PTSDの問題を抱えておられると言えます。

この複雑性PTSDは以下の状態となります。

 

【複雑性PTSD】

複雑性 PTSDは最も一般的に、逃れることが困難もしくは不可能な状況で、長期間・反復的に、著しい脅威や恐怖をもたらす出来事に曝露された後に出現します。

 

(例:拷問、奴隷、集団虐殺、長期間の家庭内暴力、反復的な小児期の性的虐待・身体的虐待)

 

診断はPTSDの診断(再体験(フラッシュバック)、過覚醒、回避麻痺症状)

に加え、以下の様な深刻かつ持続する症状によって特徴付けられる。

 

1)感情コントロールの困難さ

2)トラウマ的出来事に関する恥辱・罪悪・失敗の感情を伴った、自己卑下・挫折・無価値感

3)他者と持続的な関係を持つことや親近感を感じることの困難さ

 

複雑性PTSDは、PTSDの3つの症状(再体験、過覚醒、回避麻痺状態)、対人関係の問題、ネガティブな自己観、感情のコントロールの困難などの状態を指します。

 

この状態というのは、日常生活の様々な場面では漠然とした「生きづらさ」と実感したりする場合もあるかも知れません。ご来室されるクライアントの多くの方は、幼少期から現在に至るまで「生きる」上での様々な形で、これら問題を抱えて生き抜いて来られています。

 

学校や職場での対人関係の問題、不安感が強く友達仲間を作りにくかったり、自分に自信を持てない等という問題を抱えておられます。多くの場合、ご自分の性格の問題や、原因不明の体調不良等と「本当の問題に名前がついていない状態」の場合が多く見られます。

 

そして「ご自分がいたらない」とご自分を責めておられる場合が少なくない状況です。

虐待サバイバーのアセスメント

虐待サバイバーのカウンセリングを進めて行くに際し、非常に重要な点がアセスメントとなります。初回面接ではご来室された方の、主訴(ご相談内容)、ご家族背景、幼少期からの生育歴を丁寧にお話を伺わせて頂きます。

 

当相談室ではアセスメントを非常に重視し、カウンセリングを進めさせて頂いております。アセスメントというのは例えて言うならば「地図」のようなものです。

 

今の「現在地」を把握し、その「現在地」から「目的地」を定め、その「目的地」に到達するためには、どのような方法を用いていけば良いかという事を、初回面接では行なっております。

 

そして初回面接の中で、セラピストから「目的地」に到達するための治療方針をご提案させて頂きます。

 

抱えていらっしゃる様々な症状や問題の理由を把握させて頂くために、アセスメントは非常に重要となります。

 

そのお話の中から「なぜ今このようであるか?」っていう理由を探し、その仮説を元にトラウマ治療を進めさせて頂きます。

 

アセスメントの際に実感する事は、多くの問題は、幼少期からのトラウマに付随する影響と考えられる事です。

 

例えば怒りの問題、様々な依存(買い物、お酒)の問題を抱えている背景には、幼少期の家族の中での依存症や暴力のトラウマの影響がある場合もあります。

 

トラウマの問題を抱えていますと無意識に緊張が高くなってしまい、普段から不安や恐怖をベースとして対人関係を結ぶ傾向が出てくる場合があります。本音は「NO」なのに、相手のために「YES」とついつい答えてしまう。

 

それによって本来やりたくない事を我慢してしまうことで、怒りの問題と発展してしまう場合もあります。依存症の問題はトラウマの根底にある恐怖を緩和させたり、人との一体感を感じられない孤独を癒すための方法の一つであったりします。

 

しかし理由がわからない時、本人は「自分がだらしない」と間違って帰属してしまい、自信を失ってしまっている場合もあります。

 

このように虐待のトラウマと、現在抱えている症状や問題とは密接に関連している事が多くございます。

 

虐待サバイバーのカウンセリング事例はこちらになります。ご興味のある方はご参照下さい。

 

以下に虐待サバイバーのトラウマ治療を進めて行く際の、FAP療法によるトラウマ治療について述べて行きたいと思います 。

虐待サバイバーのトラウマ治療(FAP療法)

当相談室では虐待サバイバーが抱えている問題、複雑性PTSDに対しFAP療法を用いトラウマ治療をご提案致しております。

 

FAP療法(Free from Anxiety-Program)は1999年に大嶋信頼先生により、日本において開発された新しい心理療法で、2001年に治療が体系づけられた心理療法であり、従来の心理療法や薬物療法では治療が難しかったPTSDの諸症状や恐怖症の克服、パニック障害などの幅広い問題に対して劇的な効果を示すといわれています。

 

また以下に虐待サバイバーの抱える、幼少期からのトラウマの問題(複雑性PTSD)に対応して行く際のトラウマ治療のついて具体的に述べて行きたいと思います。

 

幼少期からから累積されたトラウマは大人になってからの症状と関連していると言われています(Marylene Cloitre 2009)。虐待サバイバーの多くは複雑性PTSDの状態を抱えていると言えるでしょう。

 

Kevin F.W. et al(2009)は幼少期からのトラウマの問題である複雑性PTSDは、PTSDと比較すると攻撃性と自傷行為傾向が高くなると述べています。そして自分を取り巻く世界に対する認知の崩壊が顕著に起こるとも言われています(Elana Newman et al 2006)。それだけ虐待サバイバーの抱えておられる状況は、相当シビアな問題を抱えていると言えます。

 

この虐待サバイバーの抱えている、幼少期からのトラウマの問題である複雑性PTSDの治療は難易度が高いため、混乱しやすく治療期間が長くなる傾向があるという事も言われています(James A.Chu MD 2011, Bessel van der kolk,2014)。

 

そしてトラウマの性質として、トラウマ性記憶は記憶から消しされてしまう傾向もあります(Allison G.Harvey 2005)。この状態を「トラウマ性健忘」と言います。そしてこのトラウマ性健忘を抱えている状態を、幼少期における虐待の問題を示唆する心理的症状であるとしています(John Briere et al 1993)。

 

John Briere(1993)らの性的虐待の既往歴のある人を対象とした研究では、被験者の 59,3%が18歳以前の虐待の記憶の健忘があったとしている。より重篤なトラウマを経験した人は、 記憶に関するパフォーマンスが乏しくなる研究もあります(Reginald D.V.Nixon et al 2005)。

 

つまり幼少期からのトラウマを治療を進める際、記憶から欠損したトラウマをどう扱っていくかという難点があるのです。

 

またRothbaum(2000)は、トラウマサバイバーはトラウマの記憶に直面することの困難さについて述べており、トラウマに暴露する事で不安が一時的に高くなる状態に耐える事が難しくなるとしています。このように虐待サバイバーが、いざ回復のために治療に向き合おうとする際にも困難さを抱えてしまう問題があるのです。

 

McDonagh-Coyle (2005)の認知行動療法の研究では、児童期性的虐待の既往があるPTSDを呈するサバイバーに対し暴露療法を用い介入した。暴露療法を行った群は統制群よりもPTSD症状や感情調整力が改善したが、暴露療法を行った群は43%のドロップアウトがあったとしている。

 

つまり認知行動療法(暴露療法)はPTSD治療に有効性であるが、トラウマの記憶を言語化する際、クライアントの適応が下がってしまったりドロップアウトの問題等が考えられるのです。

 

上記の様な治療の難易度の高さ、幼少期の記憶の欠損の問題、トラウマを言語化する際クライアントの適応が下がってしまう問題等をクリアする方法としてFAP療法があるのです。

 

FAP療法を用いてトラウマ治療を提案させて頂く事で、CLはトラウマの状況を詳細に語る事なく短期間で安全な形でトラウマ治療を進める事ができるのです(大嶋 2001,久藤 2003,大塚 2018, 2019, 2020)。つまり幼少期から虐待の問題について戦ってこられた虐待サバイバーの方々が、楽に安全な形で過去のトラウマを手放し「私らしく自由に生きて行く」事が出来るのです。

 

このような経緯で、当相談室では幼少期からのトラウマの問題を抱えた虐待サバイバーの方々に対し、安全な形でかつスムーズにトラウマの問題から解放されるためのFAP療法を用いトラウマ治療をご提案致しております。

 

●カウンセリングをご希望の方は、こちらをご確認下さいませ。

 

【参考文献】

・Allison G.Harvey. (2001). Reconstructing trauma memories:A prospective study of    “Amnesic”trauma survivors. Journal of  Traumatic Stress,14(2), 277-282.

 

・Bessel van der kolk. (2014). The Body Keeps the score. Penguin books, New York.

 

・Elana Newman, David S. Riggs, Susan Roth.(2006).Thematic Resolution ,PTSD,and complex     PTSD:The relationship between meaning and trauma-related diagnoses. Traumatic Stress,10(2), 197-213.

 

・Fumio Kuto. (2003). FAP (Free from Anxiety Program) in the Clinical Practice of  Psychosomatic Medicine – II. Statistical Examination and Thoughts on Techniques. Japanese Journal of Addiction & Family, 20, 173-196.

 

・John Brier., Jon Conte .(1993). Self-reported amnesia for abuse in adults molested as  children. Journal of Traumatic Stress , 6(1),  21-31.

 

・James A.Chu MD.(2011). Complex PTSD:The Effects of Chronic Trauma and Victimization.John Willey &Sons,Inc.

 

・Kevin F.W.Dyer,Martin J.Dorahy,Geradine Hamilton,Mary Corry.(2009).Anger, aggression, and self-harm in PTSD and  complex PTSD,Journal of Clinical Psychology, 65(10),1099-1114.

 

・Marylene Cloitre, Bradley C.Stolbach, Judith L.Herman.(2009).Journal of Traumatic Stress,22(5),399-408.

 

・McDonagh-Coyle,A.,Friedman,M.,McHugo,G.,Ford,J.D.,Mueser, (2005).psychometric outcomes of a randomized clinical trial of  psychotherapies for PTSD-SA.Journal of  Consulting and Clinical Psychology,73,515-524.

 

・Nobuyori Oshima., Hiroshi Yonezawa., Masumi Matsuura ., Toshinori Nakamura ., Fumio Kuto ., Takefumi Yoshimoto., and Satoru Saito. (2001). FAP (Free from Anxiety Program)- A New Trauma Therapy. Japanese Journal of Addiction & Family,18,  529- 536.

 

・ Rothbaum,B., Meadows,E., Resick,P.,&Foy,D.(2000).Cognitive behavioral therapy. In E.Foa,T.Keane,&M. Friedman(Eds), Effective treatments for PTSD: Practice guidelines from the International Society for Traumatic Stress Studies(pp.66-83) New  York Guilford.

 

・Reginald D.V. Nixon , Pallavi Nishith, Patricia A. Resick. (2005) . The accumulative effect of trauma exposure on short-term and  delayed verbal memory in a treatment-seeking sample of female rape victims. Traumatic Stress,17(1) 31-35.

 

・Shizuko Ohtsuka., Nobuyori Oshima.(2018). Efficacy of trauma therapy Clinical study  on FAP therapy for psychological trauma. International Society for Traumatic Stress  Studies 34th Annual Meeting,Washington, DC. 

 

・Shizuko Ohtsuka., Nobuyori Oshima. (2019). On the Effectiveness of FAP Therapy in  Complex PTSD. International Society for  Traumatic Stress Studies 35th Annual  Meeting, Boston.

 

・Shizuko Ohtsuka, Nobuyori Ohshima.(2020).On the Effectiveness of FAP Therapy in Complex  PTSD A Short-term Approach to the Traumas of Child Abuse (Physical Abuse and  Neglect), International Society for Traumatic Stress Studies 36th Annual Meeting,  Atranta.