不安障害は、安全な状況であっても過剰な不安や恐怖によって社会生活に支障を来す精神疾患です。動悸、呼吸困難、震え、発汗などの身体症状が伴い ます。性格特徴としては完璧主義、真面目、几帳面、心配性の人に現われます。
何度確認しても自分が間違っている、自分が悪いのではと不安になるのが不安障害です。その不安の引き金は、日常生活のちょっとした行動に現われます。
数字を見れば見るほどいよいよ計算が間違っている気がして同じ計算がやめられない
ガスなど使用していないのに外出前にガスの元栓が気になって何度も確認していたら遅刻してしまった。
自分の過度な不安によって周りに迷惑を掛けているという罪悪感がある。
何度も確認したけれど、やっぱり気になって仕方がない
健康を害するほど不安な時は、自己評価を益々下げ、社会生活では不適応を起こし、自分に罪悪感を覚えます。もう社会復帰できないのではとさらに不安に支配されます。
不安障害は現実には起きない不合理な信念によって認知を支配します。しかし、その認知は社会に適応することばかりを優先しますから、自分の快不快や自分はどうしたいのかという自己の感覚を感じさせません。この認知の歪みに気がつくとは非常に重要です。
そこで不安の意味や役割についてお話したいと思います。
不安には大切な心のメッセージが隠れています。
そのメッセージを理解した時、心は安定に向かって成長しようとします。
Aさんはカフェインの過剰摂取でコーヒーがないと不安になり、コーヒーを何杯も飲んで心拍数が上がり、手の発汗、動悸や頭痛がして鎮痛剤を飲むような習慣が日常化しています。Aさんはカフェインによって自律神経が乱れているから、コーヒーをやめれば不安感から脱却できると漠然と知っています。しかし、コーヒーがないことも不安です。家族の協力も得ながら、なんとか1か月カフェインを断ちましたが不安感は減少したものの離脱症状で抑うつに襲われます。
Aさんは気が抜けたような自分がどうにも耐えられません。このままじゃ生きていても面白くないと再びカフェインで覚醒と離脱を繰り返し、体調を崩す方を選択します。
Aさんは考えました。
「コーヒーがないそのままの自分は安心できないって何か変だぞ?
コーヒーは不安感とイライラが高まるし、胃痛や頭痛も慢性化してよいことがない。それなのにコーヒーがないと安心できない自分をそこに感じる。コーヒーを飲まない自分ではダメだと誰が言っている」
こうした葛藤の末、安心できないのは自分ではない。これは私の感覚ではない。
私は不安が強くなると、仕事を人に任せられず、独りで何でもやってしまう。するとみんなは私を評価してくれた。その評価のためにコーヒーで不安を焚きつけては体調を崩していた。
この評価の問題からAさんは自分の問題が見捨てられ不安であると気がつき、再びコーヒーを断ち、抑うつ状態の中から自己肯定感を見つける楽しみをようやく試みます。
精神疾患を早く治療して早く社会に適応しないと、、、、こうした不安と焦燥感は変化しようとする自己の成長を停滞させます。
精神疾患の多くは効率性や合理性、利便性を重視する社会生活の外側にあります。
社会に適応できない自分はもう終わりだ、ダメな人間だ、何をやってもすぐに心配になる、、、、。
社会に適応するために即効性があるクスリは、我々を比較的速やかに社会適応させてくれる一方で、社会に適応できない人間は価値が低く、悪いレッテルを貼られ、みんなから非難される存在だという自己否定感を形成する恐ろしい面も持っています。
しかし、自分の気持ちは正直です。その正直な気持ちは不安によって表現されるかもしれません。不安は言います。
「あなたの味方をしない人や社会に合わせすぎないで。今はそこから距離をとるべき時期。自分の快不快を発見する方法を見つけましょう。そして、あなたに味方しない者たちを怖がらないで生きられる方法を見つけましょう」
不安の役割は、自我の成長にとってとても大切です。
不安障害の原因は以下の5つが挙げられます。
①遺伝によるもの:不安や焦りを感じやすい家系
②脳の機能異常:偏桃体の過活動やセロトニンの代謝が不安定
③身体的要因:アルコール、カフェインなどの中毒、甲状腺の疾患など
④環境によるもの:養育環境に虐待があった、不安型の愛着を形成したなど
⑤性格によるもの:几帳面、神経質、潔癖症など
①、②は遺伝的要素が強いため、あらかじめ不安を感じやすい家系であることを理解していると、心理カウンセリングよりも薬物療法が有効な場合があります。
④、⑤が原因による不安の場合は、性格形成に問題のあった養育環境を観察する心理カウンセリングとグループミーティングの組み合わせが有効な場合があります。
③は心理カウンセリングと薬物療法、グループミーティングなどを組み合わせると有効な場合があります。
不安障害が環境因か遺伝因かを究明することよりも、そのどちらをも輻輳させながら観察することが必要です。
不安とは漠然とした恐れの感情で、誰もが経験する感情です。
しかし、不安障害の不安は、はっきりした理由がわからず不安を感じます。理由があってもそれと不釣り合いに強く、執拗に不安を感じます。
不安のあらわれ方に色々な形があり、以下のように分類されています。
愛着のある人(養育者、恋人など)からの離別によって過剰な恐怖・不安感や苦痛を抱えます。分離(離別、死別の予感)に対する抵抗や拒否感を抱える。また分離を主題とした悪夢を反復的に見る、頭痛、胃痛、吐き気等の身体症状が出る場合もあります。
他の状況では話をしているにもかかわらず、理由のわからない強い不安によって特定の社会状況(例:学校、職場など)において、言葉を発せず会話を一切しません。
特定の対象または状況(例:飛行機に乗る事、高所、注射される事、血を見る事)から強度の不安を感じます。
繰り返される予期しないパニック発作、パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分いないでピークに達し、その時間内に動悸、発汗、震え、息苦しさ、窒息感、めまい、寒気または熱感、現実感消失、死への恐怖感などのが起こる。
交通機関(例:自動車、バス、列車、船、飛行機)の利用、広場(例:駐車場、市場、橋)、囲まれれた場所にいること(例:店、劇場、映画館)、列に並ぶまたは群衆の中にいること、家の外で一人でいる事等の状況において顕著な恐怖または不安感がある。
仕事や学業などへの過剰な不安と心配が大人で6か月、子どもでは4週間継続します。他の症状として、落ち着きのなさ、緊張感、疲れやすさ、集中困難、怒り、筋肉の緊張、睡眠障害等の状態を伴っています。
パニック発作もしくは不安感を抱えている。そしてそれらの不安、パニック状態が物質(酒・薬 ・カフェイン等)中毒または離脱の期間中、またはその直後に発生している不安症です。
強迫性障害は理由のわからない不安を抑止しようと、儀式のような行動を反復させます。理由のわからない不安は繰り返される思考、衝動、イメージによって侵入します。これらは、反復行為(手洗いの反復、確認癖、数える行為など)によって不安を緩和しようとします。不潔の回避、ミスはあってはならない、人に迷惑を掛けていないかなどの強迫観念が反復します。
複雑性PTSD障害の方が安心安全な環境をやっと手に入れた時に、トラウマのフラッシュバックや悪夢が頻発することがあります。その悪夢やフラッシュバックを抑圧するかのように、強迫性障害の確認癖や不潔回避、潔癖症などの反復行動をとることもあります。
社会に適応しなければ、、、、この「しなければ」によって自己の感覚は封印され社会適応のために薬物療法によって不安のメッセージを見失います。不安を主訴とする強迫性障害の事例によって、薬物療法から心理カウンセリングへと移行することが自己の成長にとってとても大切であると思っていただければ幸いです。
自分自身にも強迫性障害の経験があります。かつて某スーパーの店員として働いていた時、売上げの確認を何度チェックしてみても、あるいは商品の在庫を何度数えても間違っているのではという疑念が払拭できず、他のスタッフから首をかしげられながら、何度も何度も確認をやめられない。そんな状態のために、他の仕事が手つかずになり、上司から全体を見ながら仕事をするよう何度も注意されます。しかし、それができない。翌日も何度も商品を数え、毎日残業しては売り上げを何度も確認する。
上司を含めた他のスタッフが私に呆れ、怒りを感じているのでは?迷惑をかけているのでは?と思うと自分の情けなさに、お客様の面前で涙があふれてしまいました。見かねた売り場の主任がどうしたの?と尋ねてくれたおかげで、とうとう自分でもわからないが確認がやめられないことをはじめて打ち明けました。
主任はよく理解してくれたので早退して今日にでも心療内科を受診しなさいと私を早退させました。
心療内科では不安を主症状とする強迫神経症と診断されます。トランキライザー(抗不安薬)と眠剤を処方され、1週間後に職場復帰すると不安は和らぎましたが、薬がないと不安や恐怖が自分の心を支配しているそんな自分に愕然として、社会復帰できたことを素直に喜べませんでした。
この心の状態を以前のように安定させることはできないのだろうか。そして不思議なことは、厳格な親の下を離れ悠々自適に生活をすることができるようになった時に、なぜこんなにも強く不安を感じるようになってしまったのか、、、、こうした問題は心理カウンセリングに相談した方がよいのではと、この不安(強迫神経症)をきっかけに心理カウンセリングと出逢いました。
当相談室では不安障害に対するカウンセリングとして、幼少期からの家族的背景を基盤とするトラウマの問題に焦点を当てながら進めさせて頂いております。
不安障害の方の多くは、理由もわからずに過剰に不安を感じます。自分で意識できない領域には恐怖や不安、脅えの発生源である幼少期のトラウマの問題が見逃されている場合があります。
幼少期における親子関係の葛藤(虐待・ネグレクト)の問題によって、不安障害の方は人への基本的信頼を構築できないまま自分を社会に適応させますから、社交場面において不安を抑圧する緊張感は日常化しています。過度のストレスによってその緊張が崩れると不適応を起こして適応障害と診断されることは多くあります。
また過去のトラウマによる影響によって、常に不安・緊張状態に陥ってしまい、普段から体の硬直感や不眠傾向を抱えてしまうことも非常に多くあります。
当相談室では初回面接において、幼少期におけるご家族のお話を伺います。
その中で不安の原因となるトラウマの問題を把握させて頂きます。
2回目以降からFAP療法を用い、その原因となるトラウマの問題についてトラウマ治療をご提案させて頂きます。
幼少期におけるトラウマの問題が解消されるにつれ、それまで抱えていた不安・緊張感等問題が解放されていきます。FAP療法を用いトラウマ治療をご提案させて頂く事で、安全に効率良く不安の問題から解放されて行きます。
将来の不安感が拭えない。その不安と焦燥感のために、一生懸命に動こうとするが空回りをしてしまう。そのため日中は疲れてしまい集中力がない。また朝方まで寝付けない状態となり疲れが取れない。
問題の成り立ち
Cさんは幼少期から勉強ができて優秀な子供だったという。2人姉妹の妹は、Cさんほど勉強は出来ない子であった。母親は優秀なCさんより妹を可愛がっていたという。Cさんがテストでいい点数を取って来ても、母親は褒めなかった。
また幼少期から母親はCさんを他の子供と比較して「可愛くない」と貶したり、意地悪な態度をとって来たという。
Cさんは、優秀であることを母親から嫉妬されて、それによってネグレクト状態となっていた。Cさんは「ネグレクトのトラウマ」を抱えていたと考えられる。
また母親との関係では、常に否定される経験を繰り返しており、幼少期から母親との関係で安心感を得られない状況であった。そのトラウマ(恐怖)から、日常生活において不安や恐怖感を抱えてしまっていたことが考えられた。
経過
面接は主に母親との関係「ネグレクトのトラウマ」について、FAP療法を用いトラウマ治療を提案していった。
トラウマ治療を進めていくに連れて、「不安や自己否定によって自分の能力を発揮しないと母親は私に関心を持ってくれる」というシステムにCさんは気づきます。この気づきをきっかけに、Cさんの自分への内省と客観性が深まります。それと同時に不安も緩和します。
「常に頭の中にあった自分をダメ出しする思考や私の強い不安は母にとって都合がよかったんですね」とCさんが優秀であるが故に母親から嫉妬されている感覚は私のものではないと実感します。
Cさんは不安の問題から「私が本当にやりたいことは何か?」、「今、私は何を感じているのか?」という私の感覚を成長させるカウンセリングへとシフトチェンジしている。
不安障害を抑える薬で社会復帰はできたけれども、症状を抑えているだけで自分の快不快や自分がやりたいことを感じられない自己感覚の麻痺で不全感がつきまとうようでしたらご来室ください。
不安障害による不安や確認癖、潔癖症、完璧主義、真面目さなどは他人の評価によって審査されるシステムを無意識に選択して自分に罪悪感を与える悪循環を繰り返している場合も多くあります。
ご興味のある方はご参照下さい。
【執筆者情報】
大塚 静子
資格
所属学会
経歴
研究実績
研究実績はこちらをご参照下さい
著書
『甦る魂』はこちらをご参照下さい