「気分が落ち込んでいる」と表現される状態を抑うつ気分と言います。抑うつ状態とは抑うつ気分が強い状態を指します。人間であれば多少の気分の波はあるかもしれません。その気分の波があまりにも強く、かつ一定以上の期間持続し、日常生活や職業生活に支障をきたす程になりますと抑うつ傾向があると考えられます。
昨今のストレス社会の日本では、いかに屈強な人でも抗し難いストレスにさらされる状況は良くある事かも知れません。そのストレスフルな社会の中で精神的にも消耗してしまうのは、ある意味当然のことかも知れません。
うつ病は全ての年齢、全ての社会背景を持つ人達に起こりうる状態なのです。
●うつ病の症状
1.身体の症状
眠れない、食欲がない、疲れやすい、体がほてる、微熱がある、肌が荒れる、便秘気味、下痢等。
2.心の症状
憂鬱な気持ち、気持ちが沈む、頭の回転が落ちる、ミスが多くなる、気力がない、自分を責める、悪い方向に考える、気分の変動がある、好きな事をやれなくなる、死にたい気持ちになる。
●大うつ病性障害の診断基準 (DSM-5)
A. 以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは(1)抑うつ気分、または(2) 興味または喜びの喪失である。
1.その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(涙を流している様に見える)によって示される、ほとんど1日中、殆ど毎日の抑うつ気分。
注:子どもや青年では易怒的な気分もありうる。
2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんど全ての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)
3.食事療法をしていないのに有意の体重減少、または体重増加(例:1ヶ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加。
注:子どもの場合、期待される体重増加がみられないことも考慮。
4.ほとんど毎日の不眠または過眠。
5. ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的なものではないもの)
6.ほとんど毎日の疲労感、また気力の減退。
7.ほとんど毎日の無価値感、または過剰だあるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)
8.思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の説明による、または他者によって観察される)。
9.死についての反復的思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画ではないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。
B. その症状は、臨床的に意味ある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域にける機能の障害を引き起こしている。
C. そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。
D. 抑うつエピソードは、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、または他の特定および特定不能の統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害によってうまく説明されない。
E. 躁病エピソード、または軽躁病エピソードが存在したことがない。
Aさんは近頃自分に対し違和感を感じる様になりました。
それまでは職場では上司から期待される存在でした。しかし朝起きてから会社に行く時もやる気が起きず、何とかして体に鞭を打って出勤するようになったのでした。職場でも家庭でも集中力が落ち、仕事のミスやパフォーマンスが下がって来たのでした。
頑張り屋のAさんは、それでも「もっと頑張らないとダメだ」って自分を責めて頑張るのだけれど、自分を追い込めば追い込む程、更に職場に出勤することすらきつくなって来たのでした。
それまで休日は自分の好きな趣味に没頭出来ていたのだけれど、休日はグッタリとして1日過ごし家事も手がつかない状態となったのでした。どうやら疲れが取れていなくて、睡眠も眠りが浅く途中で何回か起きてしまう。そして朝起きても「よく寝た」っていう熟睡感が得られず、昨日の疲れを引きずったまま仕事に行く状態でした。
かつては仕事もプライベートも充実していたAさん。だけれども抑鬱状態になってから、その楽しみが消え去ってしまって、かつての様な自分じゃない状態に自己嫌悪を感じていたのでした。
そして「これから将来は自分はどうなるのだろうか?」という不安感を常に抱え、そして生きる事すら苦痛になって来たのでした。
このような状態が一定期間続いて、日常生活に支障を来たすようになると、いわゆるうつ病の可能性が高まります。
カウンセリングではカウンセラーにご自分についてお話をする事で、よりご自分について客観視できる様になって行かれます。ご自分の抱えていた気持ち、考え方や行動パターンや環境要因等について、改めて「自分はこんな風に感じていたのか」と気がついて行かれます。そして「どうしたら自分が楽な方向に進めるのか?」と模索し「ストレスにどのように対処していったらよいのか?」、「ご自分をどうマネジメントしていくか?」という事をカウンセリングの中で次第に習得されていかれます。
このような過程をカウンセラーと共に進んでいく事によって、抑うつ症状の改善だけでなく「人生をより私らしく生きていく」ことが出来るようになられます。
またこれまでの人生において未消化となっている怒りや恐怖や罪悪感等が、うつ病や気分障害に大きく関わってくる事もあります。カウンセリングでは幼少期からの経緯について、カウンセラーと共に「何が起こっていたか?」について見つめて行き、そして認めて手放していく作業を行なって行きます。そしてこれまでの生き方や今後の人生を再検討して行きます。
当相談室では、短期に安全な形で効果を示すFAP療法を用い、過去の未消化の問題(トラウマ)を扱って行きます。FAP療法を用い進めさせて頂くことによって、一般のカウンセリングよりも早く抑うつ状態から回復を見込める事が可能となります。過去の問題(トラウマ)を整理し、認めて手放して行くに連れ、より「私らしく自由な生き方」を選択されいかれます。