「頭痛」「肩こり」「腰痛」などはだれもが経験する症状で、大きな病気に見なされずに慢性化して、仕方のないものだと思われたりします。市販の鎮痛薬で一時的には改善しますが、薬の服用は日常化します。また、定量以上の痛み止めを服用してしまったりと体に負担をかけてしまいます。
「鎮痛剤と常に一緒のわたし」、「痛みといつも一緒の自分」であることを意外にもご本人は異常だとは思ってもみません。あたかもそれが自分の個性の一部分のように思っていたり、「薬はわたしのお守り」といった感覚をもちつづけています。
ところが服薬回数がいよいよ増え、いつもの鎮痛薬ではお守りとして機能しなくなるときがやってきます。加えて「めまい」「吐き気」「しびれ」「麻痺」などもあらわれて、「これは重大な病気では?」と強い不安に悩みます。
内科、整形外科、頭痛外来、脳神経外科と通ってみますが、どの医師からも「異常はありません」という回答しかえられない場合があるかもしれません。ようやく「メンタル的なことが原因なのでは?」と思い当たり、心理カウンセリングでその正体が判明して改善されてゆくことがあります。
わかっているつもりでわかっていなかったこと、それは心と体との関係を意識してみなかったということで、こうした体の症状とは、日ごろ意識にわずかしか浮かばない無意識の領域のものだったのかと実感します。
自分のからだはを把握しようとするとき、必ず目に見えない部分があります。鏡という道具なしに自分の背中を自分の目だけで隈なくとらえることはできません。
これと同じように、心の中にも自分で意識できない領域があり、もしも心に背中があるとしたら、この心の背中の部分が無意識に当てはまりますでしょうか。この背中の部分を補うために「言葉で話す」という行為がありますが、ほとんどの場合、自分の本当の気持ちとはかけ離れた反対の気持ちを、親に、友人に、上司に、夫に、妻に、世間に言ってしまったりすることが日常化しています。
「自分の本当の気持ち」にはまったく鏡を向けずに放置した状態となります。これが長期化すると、過度の緊張で対人関係がストレスとなる、他人のことが気になる、「私はどう思われているのだろうか?」と眠ろうとすると会社の同僚の態度がいつまでも頭から離れないといったことが起きます。
いつまでたっても自分の本当の気持ちは言語化されず、からだのいたるところで無意識が暴れ出して身体症状を作ります。無意識は常に心地よいことを求めます。
また、無意識は他人を度外視しますし、善悪の判断すら知らず自己中心的です。この無意識の領域にある「本当のわたしの気持ち」を実感してあげることが、この身体症状を改善し、自分の感覚を取り戻し、自分がやりたいこと発見し、自由に軽やかに生きれるようにあなたを変貌してさせてくれます。こうした無意識の声を抑圧してしまうものが、心的外傷体験によって生じるトラウマであります。
DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)の第9章に身体症状症よび関連症群の記述があります。
① 身体症状症
(Somatic Symptom Disorder)
ひとつ以上の苦痛な身体症状があります。それによって日常生活が思うように運ばずみだれてしまいます。その身体症状によって「自分は病気なのかもしれない」という強い不安や感情、思考に執着しますが、メンタル系以外のドクターからは、体の状態は至って健康ですと告げられます。けれどもご本人にはその症状が続いています。こうした症状が6か月以上継続したのもを身体症状症と診断します。検査しても体に異常はみられません。
② 病気不安症
(Illness Anxiety Disorder)
DSM-Ⅳまでは「心気症」と呼ばれていました。
がん、脳腫瘍、脳卒中、エイズ、高血圧症、心臓病ではないかと訴え、重い病気であるという強い不安が6か月は存在します。身体的な病気は存在しないか、あってもごく軽度のものです。その特徴は、健康と診断されると恐怖を感じたり不安になったりします。
自分が健康であるはずがないと疑ります。何度も体の状態を調べ病院を受診し、精神医療のドクターや心理カウンセラーの受診の予約を敬遠し、メンタル系の病院を避けたりすることもあります。
③ 変換症/転換性障害
(機能性神経症状症)
ひとつまたはそれ以上の感覚性や運動性の身体症状を訴える精神疾患です。以下のような身体症状があります。
上記のような症状があるにもかかわらず、神経疾患や医学的疾患とが一致しませんが、神経疾患が転換性障害と誤診され、多発性硬化症、重症筋無力症、特発性又は物質誘発性ジストニアなどの身体疾患であったりすることがあります。
近親者の死や災害などの心理社会的ストレスやトラウマが原因となります。転換性障害は、無意識の領域でこれら症状群が暴れているため、「なぜ麻痺や失語や脱力症状などがあるのか」とご本人も不可解で不安です。
本来自分の言葉で表現される筈の心理的葛藤やストレスが、体の症状に転換されているため、自分の言葉でまだ表現できていない無意識を言葉する作業が重要です。
世間では原因不明の体調不良のことを別名「不定愁訴」などと呼ばれています。
「耳鳴り」「動悸」「かゆみ」「頭痛」「肩こり」「腰痛」「めまい」「吐き気」「しびれ」「麻痺」などの様々な症状は、まるで実り多い畑を荒らすモグラのように体の中を駆け巡り、あなたの活躍の機会や能力を荒地にしてしまいます。
とりわけ集団行動に価値を置く職場や学校では「病気を理由に欠勤が多いし、出社しても簡単な仕事しかしない」「同じ給料をもらうなんておかしい」「単なる怠け病だ」とわたしのことを思っているのではと、つぶれてしまいそうな程の精神的なストレスを感じてしまいがちです。
謎の病気を抱えている不安な自分と格闘しつつも、出勤や登校をしているあなたのそのエネルギーは、健常者の何十倍、何百倍もの「力」を持っている証です。この「力」、このエネルギーを正しい方向に使用できるあなたも、今ここにいるということです。
近親者の死や介護ストレス、転勤、引っ越しなどのライフスタイルや環境の変化及び幼少期の虐待経験によるトラウマの問題が身体症状となって表れます。身体症状は、言語化できないあなたの「無意識の叫び」であり、怒りの声でもあります。
「ストレスを蓄積させるあなたの心のあり方に問題があるぞ!どうして本当の気持ちをいわないのか?いつも他人のことばかり考えて、自分の居場所が自分の中のどこにもない!!」と無意識はあなたに怒っています。しかもあなたは疲労感や不快感に無頓着なため(意識化されていないため)、出口を失った無意識は、あなたの体の中で身体内暴力をふるいはじめます。
言い換えますと、他人の感覚にのっとられてしまう性格から他人を追い出し、自分の思考、感覚、身体を取り戻す心理カウンセリングをしてゆくことが重要なポイントとなります。
身体症状症の方の背景には、幼少期からのトラウマの問題が影響を及ぼしている場合もあります。虐待やネグレクト等で幼少期のトラウマを抱えている場合、感覚麻痺という、まさしく他人に影響を受けやすい心の状態にあるため、不快な環境でも過剰適応しながら日常生活をおくってしまうかも知れません。
その結果、他者(父、母、兄、姉、上司、先輩、会社、世間等)から影響を受け、無意識の領域に噴火寸前のストレス(怒り)を溜め込んでしまします。
当相談室では、初回面接にて幼少期からの状況や育成歴、家族背景についてのお話をお伺いさせて頂きながら、お客様の原因不明の体調不良(身体症状)について的確に把握させていただきます。
そのうえで、当相談室で推進しておりますFAP療法を用いさせて頂き、抑圧されている感情や他者からの解放、快・不快の判断力の回復(過剰適応からの脱却)、本来の能力を発揮できる自分を取り戻せるための面接を、トラウマの問題を中心にアプローチさせていただきます。トラウマ治療によって、長年にわたって付き合ってきた身体症状から解放されるお役に立てればと思っております。