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愛着障害

愛着スタイルの変革と防衛機制 

「愛着スタイル」は、言葉を覚える以前に母親との関係の中から生存本能で獲得した、 いわば、身体で覚えているものかも知れません。なぜだかわからないけど、やさしくされると遠慮してしまう、訳が分からず人が信用できないなど、自分に不可解な行動をさせてしまうものとして働いているかも知れません。

 

この「愛着スタイル」は言うことを聞いてくれません。また激怒してしまったり、失敗が頭の中に固着して離れない、四六時中、そのことにとらわれている。こんなに自分を悩ませているのに、誤りを指摘されると聞く耳を持てなくなってしまう、理論で相手を責めてしまう、あなたの愛着スタイルは無意識の防衛機制と手を組んで、あなたに客観性を許さず、あの手この手であなたの自己変革の邪魔をしようとします。

 

身体と無意識領域に棲みついている「愛着スタイル」は、社会との折り合いなどお構いなしにアクセルを踏み続けます。その暴走が対人関係で事故を起こしますが、スピード違反の事実を認めず、様々な防衛機制を使って自己弁護してしまう側面にも「愛着スタイル」の影響を感じます。

 

それはご自分を特別扱いにしてほしいというご自分にとっての特別な養育者(母親)への愛着願望のように思われます。しかし、度を越してしまうと、対人関係で問題を多発してしまうかも知れません。

愛着障害(対人関係、行動、認知を支配するもの) 

自分以外の人といると落ち着かない、過剰に気を遣う、人を頼れずに抱え込む、表面では取り繕い内面では怒りや不安が強い、早く一人きりになりたいと感じる、見境なく初対面でもフレンドリーすぎて学校、職場、男女関係でトラブルが絶えないなど、対人関係や行動、認知を支配しているといわれるものの原因のひとつが「愛着」と言われています。 

 

「愛着」とは 

「愛着」とは、生物が特定の養育者に寄り添い、くっつこうとする近接行動の研究から発展した概念です。近接は依存しなければ生存も安心もできない乳幼児の生得的な行動です。危険でストレスフルな状況でも”私は安全です、守られている”という感覚が心の土台となり、それが「愛着」と呼ばれるものになります。

 

「愛着」は特定の養育者との関係の中で乳幼児期に形成されます。およそ6か月から1歳半までの間に子どもは特別な自分の養育者を他の大人たちと区別します。特別な養育者を見分けて、愛着の個人差を測定する検査方法には「新奇場面法」というものがあります。アメリカの発達心理学者メアリー・D・エインスワースによって開発された検査方法です。以下の手順で行われます。 

 

●メアリー・D・エインスワース新奇場面法 

 

時間】

20分前後で親子が分離と再会を繰り返します。 

 

子どもの年齢】

12~13か月が対象  

※18か月まで測定可能とされてます。 

 

1)ある部屋でお母さんと赤ちゃんに二人で遊んでもらう。 

 

2)見知らぬ人が入室、お母さんは退室し、赤ちゃんと見知らぬ人だけになります 。

 

3)お母さんが再び入室し、見知らぬ人は退室 。

 

4)お母さんが退出し、赤ちゃんが一人取りだけになる。 見知らぬ人が入っていき、赤ちゃんを慰めます。 

 

5)最後はお母さんが入室して、見知らぬ人が退出。 

 

このようにお母さんと見知らぬ人との分離と再会繰り返しながら、特別な養育者(お母さん)との関係を観察することで、愛着の深さの度合いや愛着のタイプをとらえることが可能となります。言い換えますと、ひとりでは衣食住もままならない乳幼児が、愛着行動を通して生存を維持させるために獲得してきた個性の芽であり、以下のように類型化されています。 

 

1.安定型 

子どもがストレスを感じたときに親のレスポンスがタイミングよく的確な場合です。親への信頼と安心感があり、親が安全基地として機能しています。親から離れると不安で泣いたりしますが、親が現れるとすぐに安心して泣きやみます。 

  

2.回避型 

子どもにとっての安全基地であるべき親が安全基地として機能してません。子どもは親から離れていても親を求めるストレス反応がありません。親が子どもにレスポンスせず無関心であったり、特別なひとりの養育者を独占できずに複数の養育者にそだてられた子どもに生じます。子どもは自身のストレスを攻撃性や反抗的態度によって表現したりします。 

  

3.抵抗・両価型 

子どものストレスに対する親のレスポンスがあったりなかったりしたため、親から分離すると激しく不安なります。親が子どもの前に登場すると、子どもは激しく泣いたり怒ったり、叩くなどの行動をします。安全基地としての親が機能不全なため、子どもは不安定な状態なので、親への愛着行動がいったん始まると、抱き着いてなかなか離れないほど過剰となります。 

 

その後、1980年代にメイン (Main,M.) とソロモン (Solomon,J.) が「混乱型」を付け加え、現在、4つに分類されています。 

  

4.混乱型 

本来「安全基地」である親が恐怖を感じさせる存在であるため、子どもは怯えたそぶりを見せます。「回避型」と「抵抗・両価型」の特徴が一緒になったような状態です。虐待経験や精神疾患のある親が、親に接近したいけど恐怖を感じるといった葛藤を子どもに残します。子どもの行動パターンは無秩序となり、激しい感情を見せたかと思うと無反応になったりします。 

 

愛着スタイルの定着と内的作業モデル  

乳幼児期の後半になると、泣いたり暴れたりする愛着行動が少なくなり、心に内在化した愛着対象を基盤に他者と相互作用をしはじめます。これは内的作業モデル(IWM:Internal Working Model)と呼ばれ、社会性や対人関係の基礎となるものです。

 

J.ボウルビィが提唱して、内的作業モデルによって対人関係におけるパターンが生涯を通じてそのパターンを保持するものになるといわれています。それは社会性の芽であり、社会の中の自分を観察する客観性の芽でもあると言えます。 

内的作業モデルと虐待トラウマ 

社会は他者の中の自分を意識する場所であり、社会の中で生きづらさを感じた時、この自分を安心させるには、どのように自分を変化させようかと人は悩み、考えます。集団の中にいると自分自身に違和感を覚える、生きづらさを感じてしまうことは、自分の中の内的作業モデルの歪みが対人関係でのトラブルに影響を起こしていると思われます。

 

内的作業モデルの歪みとは、親からの虐待トラウマやネグレクトであったりします。それは「愛着=トラウマ」という図式で表せます。 子どもは親を選べません。虐待やネグレクトのある家庭の中でも生存本能から、子どもはその親が自分にとって安心できる人なんだと言い聞かせます。生き残るために、虐待する親に「安全基地」の幻想を持ち続けなければなりません。この幻想が、認知や客観性を歪めて生き方全般を支配し不全感を生じさせている場合があります。 

自分の愛着スタイルを知ることとトラウマ治療 

「愛着には臨界期があるといわれているし、一生涯自分の愛着スタイルは変わらず、ずっとこのままなの!?」と愛着関連の本を読むと、愛着は修正できないものという印象を受けてしまうことがありますが、そのようなことはありません。自分を客観視できる能力は、自己変革への次のステップをもたらします。

 

しかし、その客観性や自意識、認知に歪みが生じると負のループから出られなくなってしまいます。この歪みを修正するためにも、自分の愛着スタイルをよく知っておく必要があります。そのためにもトラウマ治療は不可欠かも知れません。

 

そして、自分の中に常駐する「愛着」の罠に何がなんでも引っかからないようにしたい。自分の愛着スタイルの傾向がわかれば、愛着スタイルは歪みのない客観性によって修正と克服を繰り返します。また、社会の中で自分に影響を及ぼす様々な人との出逢いがはじまったりします。

 

あるいは「なんで私の足を引っ張るこんな人と一緒にいたのだろうか」と自分にとって負担でしかない人を断ち切ることができるようになります。自分の弱点と「強み」や「才能」が見つかって行くかも知れません。このように自分の中の「愛着スタイル」を知ることが、自分の「強み」や「才能」を発見させ、成長へと導きます。 

 

精神疾患の分類と診断の手引き(DSM-5)の中の愛着障害を記述した以下の診断名が代表的なものですが、子どもを対象にした診断基準で大人版は取り上げられていません。 

 

・反応性アッタッチメント障害/反応性愛着障害(抑制型) 

大人の養育者(親)に対する子どもの反応が抑制(遠慮がち)されている。苦痛な時でもその子どもは安楽(楽しみ)を求めない、あるいは反応しない、したとしても最小限の反応しかしません。陽性感情(喜び、楽しみ、安堵など)は制限され、他者との交流や情動反応(感情的なやり取り)が乏しい。養育者が威嚇していなくても、説明できないいらだたしさ、悲しみ、恐怖を感じます。自閉症スペクトラムの診断基準を満たさないことと定義されています。 

  

こうした子どもは養育環境下で、愛情、安楽、刺激という情動欲求が養育者によって満たされず、母性剥奪や社会的ネグレクトを経験しています。里親による養育者の度重なる交代が原因で、安定したアタッチメントを形成できなかったり、児童施設で子どもが10人に対して養育者が1名といった関係が、各々の子どもへの特別な対応が不十分で選択的アタッチメントの機会を制限されたりしています。 子どもの年齢は少なくとも9か月であること、障害が5歳以前であること、障害が発生してから12か月以上であることされています。  

  

 ・脱抑制型対人交流障害(脱抑制型)  

見知らぬ大人と積極的に交流してしまいます。言葉づかいや行動、身振りが過度に馴れ馴れしく、どこか見知らぬ場所にひとりで行くような状況でも、大人の養育者(親)を確認しません。注意欠陥・多動症のような衝動性が特徴とする行動様式に限定されず、その愛着行動は脱抑制的で見境がありません。子どもの年齢は少なくとも9か月であること、障害が発生してから12か月以上であることとされています。  

大人の愛着障害  

日本を代表する愛着障害の研究家のひとりで、精神科医で作家の岡田 尊司氏は、愛着障害を子どもだけではなく大人にも広く見られる問題として取り上げ、その著『愛着障害(子ども時代を引きずる人々)』(光文社新書2011年)を書かれています。 

 

岡田 尊司氏の「愛着障害」は、DMS-Ⅳの「反応性愛着障害」と区別して、岡田氏が定義されたものです。 DMS-Ⅳの「反応性愛着障害」が親の虐待や養育放棄によるものであるのに対して 、岡田氏の「愛着障害」は実の親のもとで育てられていても不安定型の愛着を示し、精神的な問題に苦しむ大人を対象にしています。

 

「愛着スペクトラム障害」とも著者は呼んでいます。3分の1の大人に当てはまるというデータがあります。私見になりますが、この「大人の愛着障害」を複雑性PTSDのトラウマという観点からとらえることで、その人の人生に変化や成長がはじまると思っております。短期に安全な形でトラウマ治療を行えるFAP療法はこうした問題を解決できる有効な治療法のひとつと考えております。

 

「愛着スタイル」は過度のストレスによって出現してしまうかも知れません。個人の心情(寂しさ、苦しさ、憂鬱など)を、便利な道具や嗜癖をあてがうことで回避すれば、その心情は心の奥深くに沈んでゆきます。 病的にはまっているのに我々は必需品と呼んでしまうインターネットは、意識の防衛機制に加担しながら、トラウマ体験を封じ込める公認の依存症推進の道具になりかねません。

 

そこには生きることの不全感が常につきまといます。便利、お得、楽しい情報が氾濫しているのに、何故か物足りず、今日も一日を台無しにしてしまった、何がしたいのかわからないという思いだけが残っていたら、今一度、利便性や効率性が氾濫するインターネットを閉じてみてください。 

 

「私を観察して!」というあなたの声が聞こえませんか?

 

強烈な怒り、寂しさ、不安が現われた時 それがあなたの正体です。 

 

「こんにちわ どうですか最近?」と やさしく尋ねてあげてください。 

 

  

個人の心情(寂しさ、苦しさ、憂鬱など)を道具や嗜癖をあてがうことで回避すれば、その心情は心の奥深くに沈んでゆきます。 

愛着スタイルは変化する? 

「愛着」は、その人の個性を形成するという非常に大切な部分を担っています。 一生涯自分の中の行動、認知、対人関係を支配するといわれている愛着の類型(安定型、回避型、アンビバレント型、混乱型)を運命的なものとして感じても、その運命に愛情をもつこと、又は、理解者に巡り合うことで見方は変わります。

 

『愛着障害 子ども時代を引きずる人』(光文社新書 2011年)の著者 岡田 尊司氏は、愛着スタイルは決して変わらないものではなく、変化するものであると以下のように述べています。 

 

①「幼いころの愛着スタイルは、まだ完全に確立したものではなく、相手によって愛着パターンが異なることも多いし、養育者が変わったり、同じ養育者でも、子どもへの接し方が変わったりすることでも変化する。」(43頁12行目~44頁)  

 

②「子どもにおいて調べることができる愛着パターンは、特定の養育者との間のパターンに過ぎず、まだ固定化したものではない」(44頁4行目~5行目) 

 

あなたの愛着スタイルを意識化して、客観的にご自分を観察しながら、あなたの無意識に住んでいる「愛着スタイル」をもっと”私”が楽で自由に生きれる感じにシフトして行かれればと思います。

社会環境と愛着障害

岡田 尊司著『愛着障害』は、DMS-Ⅳの「反応性愛着障害」と区別して、岡田氏が定義された「愛着障害」です。 DMS-Ⅳの「反応性愛着障害」が親の虐待や養育放棄によるものであるのに対して 岡田氏の「愛着障害」は実の親のもとで育てられていても不安定型の愛着を示し、精神的な問題に苦しむ0大人を対象にしています。 

 

「愛着スペクトラム障害」とも著者は呼んでいます。3分の1の大人に当てはまるというデータがあります。愛着スタイルは過度のストレスによって出現します。 個人の心情(寂しさ、苦しさ、憂鬱など)を、便利な道具や嗜癖をあてがうことで回避すれば、その心情は心の奥深くに沈んでゆきます。 

 

病的に中毒化しているのに我々は必需品と呼んでしまうインターネットは、公認の依存症推進の道具になりかねません。「OK、何々!」と掛け声ひとつで、欲望が実現する。このやり取りの中に、愛着を薄っぺらくしてしまう何かが隠れてるような気がしてなりません。

 

こうした利便性をもたらす道具によって、あるいは、攪乱されるような情報の竜巻によって空中に舞い上げられ、一見、宙を飛んでいるような気になれますが、実際は、謎だらけの自分を回避するための「気晴らし」であったりすることが多いのではないでしょうか。もっとも、この道具を上手に使用され、自己実現に一役かっている側面ももちろんありますが、愛着障害の問題を考えた場合、ネット社会のネガティブな側面が浮き彫りにされてきます。

 

本当の自分がわからず、自己不全感のつきまとうのが現代社会です。自分の能力がわからないから、自分がやっていることが楽しいのかつまらないのかという感覚も麻痺します。客観的に自分を観る能力も下がり、防衛機制は心の奥深くからあなたを突き動かして、あなたの客観性(社会性)を奪い、対話不在の主観性から極度の自己愛に発展して対人トラブルに無駄な労力を使用することになりかねません。 

 

社会全体が効率性や成果主義ばかりを追い求めれば、なおさらこの傾向は加速して行きます。岡田氏も「愛着障害」が3分の1の大人に当てはまる原因のひとつが遺伝的なものよりも現代の社会環境にあるのではと述べられています。 

 

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●その他、愛着障害に関連のある「アダルトチルドレン」「HSP」「複雑性PTSD」もご参照下さいませ。