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コラム:愛着障害と恋愛問題

コラム   2026/05/20 (水)  10:50 AM

恋愛関係と愛着障害について

 

愛着障害が原因の問題行動は、夫婦関係や恋愛関係の中に顕著に表れます。  

 

 愛着とは生後6か月から1年半の間に形成される養育者との絆のことで

 

自尊心や人との信頼関係の土台となります。

 

成人以降、自己否定感が社会活動に影響する、人間関係を避ける

 

あるいは、誰彼構わず人間関係を結んではトラブルを頻発する場合など

 

愛着障害を疑うと自分の恋愛行動のパターンの謎が解けてゆくかも知れません。

 

恋愛に見られる不安型愛着障害の事例

 

不安型: 相手の愛情に不信感があるため、見捨てられ不安の恐怖が強いタイプ 

 

(不安型の事例) 

 

 彼女Cさんは彼氏Bさんの行動に振り回されていると来室される。

 

 彼氏Bさんは当初、彼女Cさんの行動を先回りしてCさんを喜ばせてくれることが多かったが

 

最近はそこまでしなくてもと思いつつも、自分勝手なことを言っているという罪悪感がある。 

 

彼氏Bさんのサプライズ行動はそれでも続き、彼女Cさんがそれを喜ばないと

 

彼氏Bさんは不機嫌になることが多い。それに私の役割がBさんの先回り行動のせいで何も見つからない。 

 

ある時、彼氏Bさんを喜ばそうと普段の感謝も込めてプレゼントをあげると

 

「自分は人から何かしてもらうタイプじゃない」とあまり喜ばなかった。

 

むしろ、彼氏Bさんのサプライズに彼女Cさんが「スゴイ!」と言っている時の方が嬉しそうだと言う。 

 

ここ数か月、Bさんと一緒にいても、驚いたフリをまたしなければと思うと憂うつになる時もある。

 

彼氏Bさんからこれ以上サプライズ行動をされてもその期待に応えられないし

罪悪感は大きくなるばかり。

 

彼氏Bさんには「なにもしなくていいから、そのままでいてほしい」と言いたいが

 

それを言えるかどうか、考えると怖くなるという。 

 

彼女Cさんにも彼氏Bさんにも対人関係で不安が高い。

 

「よい自分」を演じていることが長期化すると心が疲弊して

 

相手を受け入れることと信用することに挫折し、一方は不機嫌、もう一方は罪悪感を覚える。

 

ともに不安型同士のカップルで「~してあげた」と「~された」という関係ため

 

無条件の相手を受け入れることへの不信感が強いことがわかる。

 

彼氏Bさんは見捨てられ不安が強いため、彼女Cさんの評価によって安心感を得ている。

 

成育歴を振り返りながら、カップル面接を今後予定している。 

 

恋愛に見られる回避型愛着障害の事例

 

回避型: 相手と深く関わることを無意識に避け、自分のペースや距離感を守ろうとするタイプです。 

 

 (回避型の事例)

 

Lさんは誠実でクールで無口な感じだから、おしゃべりな私と相性がいい。

 

Kさんはとても話好きだと自称する。面談中も休みなく様々な話をするため

 

中断しないと話が脱線してしまう。

 

Kさんは自分の饒舌を黙って聞いてくれる彼氏Vさんのことで相談に来る。 

 

交際1年にもなるのにKさんのおしゃべりを無言で聞いてくれる彼氏Vさんから

 

自分の話を聞いたことがないという。いつか私だけにVさんのことを語ってくれると期待していたが

 

この頃疲れている。なぜ自分の話をしないのかと尋ねたことがあるが

 

彼氏Vさんは話す必要あるの?と短く答えただけだったという。

 

何か彼氏Vさんの心の中に入って行けない のではという不安と寂しさをKさんはこの時から覚える。

 

もっとも、彼氏Vさんの好きな音楽や趣味のネットゲーム話はよく聞くというのだが、、、。

 

今後、Vさんと信頼関係を持てるだろうかと最近は不安を感じる。

 

一緒に居ても冷たさばかりが目立ってしまう。でもいつかきっと私にだけ話してくれると感じている。 

 

当初は自分を語らない彼氏Vさんの問題を相談されていたが、「話をする/しない」というテーマを中心に

 

幼少期のトラウマ治療を進めていくとKさんの饒舌の理由の話題にシフトチェンジしてゆく。

 

自分が話をして場を盛り上げると、父と母が穏やか思えた過去の記憶を語りはじめる。

 

父と母はケンカが多く、暴力や暴言はないがお互いが何日も口を聞かないケンカで

 

両親はKさんにも沈黙し、その静けさで腹痛や胃痛を感じることがあった。

 

痛みは独り言のように喋っていると緩和していったというが、

 

その体験を言葉にしたことが今までなかったという。Kさんのおしゃべりの原点らしい。

 

彼氏Lさんは回避型の愛着、彼女Kさんは不安型の愛着を形成している。

 

そして彼女Kさんは無口なパートナーLさんを見つけたことでトラウマを再演していた。

 

現在、沈黙恐怖のトラウマ治療中。 

 

 

恋愛に見られる恐れ・回避型愛着障害の事例

 

恐れ・回避型: 親密さがトラウマ体験になているため、親密さを感じると心が不安定になる 

 

J君(23歳)は比較的裕福な家庭で育ち、両親仲もよく安定していたがJ君が6歳の時

 

母はがんで亡くなる。母の代理は父方の叔母がすぐ近所に住んでいたため

 

J君が高校卒業までは身の回りの世話をしてくれたが

 

中学3年あたりからJ君はよく癇癪を起すようになる。

 

母の代理の叔母はJ君のいない時間に来て、準備だけして帰るようになっていったという。 

 

素行に問題はあったが勉強はできた。推薦で大学にも合格し、人間関係は安定していたが

 

恋愛関係で相手への好意が高まるほど非常に心がぐらついて悲しさへの怒りが表出するため

 

来室される。 

 

J君は大学で人間科学を専攻していたので心理学に通じている。

 

自分にトラウマの問題があり、愛着形成に大きな心の傷がある未解決型の愛着なのだと自分の事を語る。

 

こうした知識があっても、恋愛関係を作りたい/作りたくないという葛藤が止まないという。

 

友人の恋愛話、性への衝動、デートスポットの話にも怒りに似た感情が現れる。

 

恋愛、結婚、カップルと面談中にこれらの言葉を発するだけで強い羞恥心や暴れたくなる感情

 

独りぼっちの感覚を感じるという。 

 

また、驚いたことに、幼少期のJ君の母の死が根深いトラウマになっているだけではなく

 

J君の父も、幼少期に母の産後の肥立ちが悪く7歳で母と死に別れていたという。

 

7歳ならば記憶にあるのではと、幼い時に父から祖母の話を聞き出そうとしたが

 

写真もなければ記憶もないという。子どもながらに父は思い出したくないんだと感じたという。

 

そんな父はJ君の母の話も多くは語らず、何か逃げるように学校長の仕事や地域の場ランティア活動に

 

没頭している。地域からの評価は高い人物だという。 

 

 

恋愛の中の愛着障害の特徴

 

・パートナーのことが気がかりで干渉や依存、猜疑心が過ぎてしまう 

 

・共感性のない態度が相手への無関心と解釈されて勘違いから破局する 

 

・信頼関係や警戒心がわからず交際相手が複数いる 

 

・相手に好意を感じるとその気持ちと反対の回避、怒りの感情、投げやりな態度などを示す 

 

・結婚しては離婚や別居を繰り返し、パートナーを渡り歩く試し行動 

 

こうした行動は愛着形成の時に、愛情への不安や怒り、絶望をトラウマにしていたり

 

親の愛着トラウマを連鎖していたりしています。 

 

このように、愛着障害が原因の問題行動は、夫婦関係や恋愛活動の中に

 

「生きづらさ」というかたちで表れます。 

 

 

愛着障害の「試し行動」と愛着トラウマの再演

 

恐れ回避型や不安型の愛着障害の人はパートナーに「試し行動」をします。

 

繰り返される試し行動によって、パートナーは怒りを爆発させます。

 

試し行動は無意識に行われ、パートナーはそれに振り回される

 

怒りを感じてケンカに発展、関係性は悪化します。 

 

「やっぱり怒った!この人も同じだ」と。 

 

通常であれば「私も悪かった」、「あなたは悪くない、私がいけなかったの」と

 

怒りの爆発が無意味であることを悟り、互いに反省、仲直りとなりますが

 

恐れ回避型や不安型の愛着障害の人は「試し行動」を目的に無意識から突き動かされているため

 

信頼できなければ次から次へとパートナーを換えてゆく行動が目立ちます。 

 

こうした行動は幼少期に形成された愛情への不信感を再演していますから

 

「今、ここ」にいるパートナーの実像や様々な側面が見えません。

 

「今、ここ」にいるパートナーの実像が見えませんし、

 

「今、ここ」にいる私の状況も見ることができません。 

 

「あなたはわかっていない!」「お前こそ勘違いするな!」「もうたくさん!!」「上等だ!」などと

 

何かに操られるようにケンカを繰り返し、私たちの何が問題なのかを心が応えてくれないため、

 

良い生き方について共に考え協力することが何処かに消えてしまいます。

 

 

愛着障害を改善する環境づくり

 

愛着は養育者の安定した情緒の下で形成されるに越したことはないのですが

 

子どもは親も家庭も選ぶことができません。

 

親の病死、虐待やネグレクトをする毒親などの下で愛着形成をしなければならないこともあります。

 

そのため、親との愛着(愛情)や恋愛活動に対する肯定的なイメージが持てず

 

愛に絶望、不信感、拒絶、暴力、怒り、不安を感じやすくなるのは当然です。 

 

愛着形成の臨界期は生後6か月から1歳半までと言われ、この時期に母親から離されたり

 

養育者が替わったりすると、不安定な愛着を形成する言われますが、心理療法や認知研究、

 

脳科学などの発展によって、不安定な愛着に気づきを与える有効な方法は多く考案されています。 

 

(自己理解を深める)  

 

愛着障害によって繰り返される恋愛の中の問題行動は

 

自分全部を受け止めてくれる掛け替えのないパートナーとの信頼関係を築くことで

 

その多くは改善してゆきます。

 

自分を相手が受容、共感、無条件の絶対的肯定感で接してくれた時

 

ようやく人はよい人生について考えはじめ、自分と他者を客観的に観察できるようになります。

 

それは愛着障害や自分の愛着タイプを認識するきっかけを作るでしょうし

 

自分を生きづらくする認知や行動の癖を修正し、自己理解を深めてくれます。 

 

 

(Iメッセージによるコミュニケーション)  

 

愛着障害は恋愛を演じさせます。

 

人を好きになる前に人から嫌われない方法や傷つかない関係について無意識に考えています。

 

人間不信や人間不安が 強い自分という自己理解を深めたら

 

自分の不信感や完璧主義がもとで相手と戦闘状態になったり

 

人間関係を回避していた代わりに、自分の気持ちをIメッセージとして伝えることが大切です。 

 

「あなたのせいで私はこんなひどい目にあった」ではなく

 

「わたしはあなたが多くを語らないから不安に感じたの」という

 

 Iメッセージは相互理解を深め、対立を減らしてくれます。 

 

 

愛着障害の克服方法にとって大切なこと

 

①私が感じていることを内省してみる。 

 

私を怒り、寂しさへと向かわせるその背景には何があるのか 

 

②感情が高ぶっている時は落ち着けるまで待ってみる。 

 

③そして安全を感じたら

 

「私は今寂しいから、あなたに側にいてほしい」などの私を主語にした

 

 Iメッセージで相手に本音を伝える。 

 

④いつも仲良しやいつも一緒でなければ、恋愛ではないという思い込みから解放されましょう。

 

すれ違いではなくお互いを尊重すること。

 

ふたりにとってどれくらいの距離感や連絡の頻度が大切かを話す。 

 

①から④はネット検索でよく見かける愛着障害の克服方法です。

 

これらの克服方法が自分でできれば、それに越したことはありません。

 

しかし、生きづらさと愛に枯渇した愛着は無意識の領域で機能している部分を持っていますから

 

愛着を克服しようとするとそれに対して無意識の抵抗が生じます。

 

何度も何度も相手を怒らせている、そんな自分を内省しても

 

落ち着かせても、Iメッセージを相手に送っても、距離感=嫌われたではないととわかっていても

 

無意識のお試し行動は愛の確認をやめない場合もあります。 

 

メンタライジングが機能しない:内省機能不全の原因とトラウマ

 

相手を思い(共感)、自分を振り返る(内省) 

 

これはメンタライジングと呼ばれる心理療法ですが、このメンタライジングそのものが機能しなければ

 

心の内省も共感も妨害され、気がつけば再び生きづらい習慣を選択しているということがあります。

 

愛着障害を克服するフリをして、実は生きづらさをこのまま続け

 

自分に気づきを与えず相手を怒らせる、困らせる、裏切らせるといったお試し行動は

 

安全基地となる相手を探すでしょう。 

 

自分を生きづらくさせる認知や行動の癖を観察しているにもかかわらず

 

生きづらさを選択する衝動が自分の中にあることをまず知っていましょう。 

 

この感覚は不思議ですが、今の自分は「変わりたくない/変わりたい」という感覚です。 

 

「変わりたくない、このままでいい」とあなたの感覚が言っているにもかかわらず

 

生きづらい自分を変えようとカウンセリングに来ているのは矛盾していますが

 

精神分析ではこれを「抵抗」と呼ぶでしょう。 

 

当室ではこの「抵抗」を、養育者のトラウマの侵入として捉えます。

 

これはあなたの感覚ではありません。当人の問題として養育者にこの感覚を返却することが

 

すべての生きやすさにつながります。つまり、「自分は変わりたくない」はあなたの感覚でなく

 

養育者の感覚、すなわち、養育者の愛着トラウマがあなた自身の感覚を支配しています。

 

そしてそれは無意識に習慣化して、あたかも自分のもののように心に住み続けます。 

 

親のトラウマによる子の支配は、あなたに恋愛を成功させません。

 

あなたの恋愛が成功しないことを安全基地にしている養育者もいます。 

 

何度も離婚を繰り返した母は現在、シングルマザーで、一人息子はやさしく、家事を手伝っている。

 

「この子が私から離れたら困るし不安だ。恋愛されたら困る」という当人には思ってもみない。

 

無意識の願望が母の未解決なトラウマによって息子の内省を機能させません。 

 

「変わりたくない」はあなたのものではありません。 

 

あなたを「絶対に変わらせない」という養育者のトラウマから発せられる声が安全基地となって

 

あなたの心の中でトラウマを再演させているため、内省も自分を感じることも

 

機能させないまま生きづらさを選択させます。 

 

以上、恋愛関係と愛着障害について述べましたが

 

恋愛にはパートナーに対して信頼と共感と無条件の絶対的な肯定感をお互いに持ちつつ

 

孤独な人間同士が相手をリスペクトしながら協力し合うことが最も大切です。

 

そのためには自分を生きづらさに近づけないこと、自分を知り、相手を知ること

 

これらの心の内省機能を正常化するためには

 

恋愛よりも先にトラウマから解放さた自分を感じることが大切です。

 

良く生きることを感じることができれば恋愛は必ずあなたに近づいてくるでしょう。 

 

愛着トラウマの無意識の判断が自ずと生きづらさばかりを選択しているようでしたら

 

 ご来室をお待ちしております。 

 

●カウンセリングをご希望の方は、こちらをご確認下さいませ。

 

●カウンセリングの具体的内容について(はじめての方へ)を掲載致しました。

ご興味のある方はご参照下さいませ。

 

【執筆者情報】

 大塚  静子

 

資格

  • 臨床心理士(NO:18162)
  • FAP療法上級資格取得

 

所属学会

  • 日本臨床心理学会
  • 日本ブリーフサイコセラピー学会
  • 国際トラウマティックストレス学会
     (International Society for Traumatic Stress Studies)

 

経歴

  • 2005年 アライアント国際大学/カリフォルニア臨床心理大学院 臨床心理学
    修士課程卒業
  • 2005年7月 アルコール依存症専門病院、周愛利田クリニックにて依存症治療に携わる。
  • 2009年7月 アダルト・チルドレン第一人者で精神科医の斎藤 学先生運営のIFF・CIAP相談室勤務。家族臨床、トラウマ治療について研鑽を積む。
  • 2014年7月 横浜にてカウンセリングルーム・グロース設立。
  • 2015年4月 浦和大学 総合福祉学部 非常勤講師 「心理療法」,「精神保健学」担当

 

研究実績

研究実績はこちらをご参照下さい

著書 

『甦る魂』はこちらをご参照下さい

 

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