コラム 2024/06/19 (水) 4:27 PM
「私のことは私が一番よくわかっている」という心理の発生源は何でしょうか。
私たちの身体の中には私の感覚や反応、判断や認知、想像などが入っています。 これらを総動員してあなたは相手を観察し、相手から何かを感じ取りながら、人間関係のほぼすべてが動いていると言っても過言ではないでしょう。
これらを相手に向かって「ほら、これが私の感覚よ、こっちは判断、あれが想像なの」と伝えようとしても、わたしが頭に思い描いている100%の形では相手は理解しないでしょう。なぜなら、相手にも相手の感覚、反応、判断、認知、想像があり、これらはお互いに衝突します。あるいは部分的に一致しているかのように錯覚しながら、人間関係という糸は他者と結びついています。
さて、冒頭の「私のことは私が一番よくわかっている」という心理の発生源ですが、それは、「どう考えてもあなたには私のことを理解することはできません」という前提を誰もがぼんやりとわかっているからではないでしょうか。言い換えれば、それは「孤独」のことです。誰もが、自分は孤独であると、何気なくわかっていることの表れではないでしょうか。
「孤独」を誰もが所有しています。「孤独」ではないフリをしようとしても、さながら放り投げたリンゴが地面に落下するように「孤独」は心の引力に引っ張られて、必ず自分の心の中に落ちてきます。
しかし、人間は自分が孤独ではないフリがやめられません。恋愛感情、明るく平和なみんなを演じる家族や仲間、理想的な親子関係、会社、等々。相手に自分の幻想や妄想を押し付けたり、相手から押し付けられたりで、ほぼ毎日がに動いています。とりわけ恋愛感情は、自分の所有する孤独への理解が相手に乏しいと、理解してもらえない孤独感に苦しんで破局を迎えてしまう場合が多いでしょう。
正しく、どう考えても相手と私の価値観は、一致することがないとぼんやり知っていながら、「一致しない」=「自分を理解されていない」と思い込み、孤独と寂しさと不機嫌に悩んでしまうのが人間です。
共通の趣味をもった者同士の、その「共通」も厳密には幻想ではないでしょうか。しかし、それでも楽しいのが趣味です。なぜ、楽しいかというと、相手に自分の「熱狂ぶり」や「推し」の感情を表現できるからで、仲間と仲良く親密になることが実は二の次だからではないでしょうか。
良好な人間関係は相手と価値観が一致することを、実は二の次にしています。つまり、自分の孤独を楽しむ術を知っているのでしょう。また、相手もそのことを知っています。お互いの実像をハッキリ見ている関係なのでしょう。
「相手から私は○○と思われている」という感覚の正しさを自分ひとりだけで確かめることはできるでしょうか。
おそらく、できません。信頼している相手に向かって「ねえ、あなたはわたしをどんな風に思っているの?」と問い掛けないかぎり、「多分~にちがいない」という憶測の世界にとどまっているのが精一杯でしょう。たとえ、相手に問い掛けていても、相手の体調が悪かったり、逆にテンションが高すぎたりしますと、相手の答えも当てにはならない時が多々あります。
このように私たちはわかり合えない世界に元々住んでいます。安心してください。みんながみんな、人間は理解し合えないのです。あなたが独り、理解し合えないわけではありません。
けれども、「ああ、この人もわたしと同じなんだ」と相手の孤独に微笑んでみる。あるいは、その孤独の側に一緒にいる。すると相手はあなたにリスペクトを感じます。また「わたしはあなたとここにいてもいいんだ」という足場(現実)を感じるでしょう。これを一般に「やさしさ」や「受容」、「寛容」、「真心」、「誠意」、「信頼」などと呼んでいるのでしょう。
パートナーの孤独が見えますか?見えませんか?
相手への「やさしさ」や「受容」、「寛容」、「真心」、「誠意」、「信頼」など。これらが危機に瀕して、崩壊しそうなときとはどのような時でしょうか。あなたが負の要素を集める磁石を飲み込んでいる時ではないでしょうか。磁石は以下のものを引き寄せてきます。
・皮肉が多く、嫌いなものが多い
・愚痴はストレス発散だから、愚痴を言わない世界なんてある訳がない
・「痛い、だるい、重い」などの症状が365日、体を元気に(!?)駆け巡っている
・相手の監視と支配欲は私の必需品
・「裏切ったな」という怒りの感情が容易に現れるように、相手に無理難題をお願いする
・不快で浮かばれない自分に居心地の良さや時にはカッコよささえも覚えてしまう
こうしたものを引き寄せる磁石が体の中にあるとするならば、孤独でないフリを演じ続ける人間でなければなりません。常に不満、常に寂しい、常にイライラしますから、相手の実像などお構いなしに、私の想い描いている相手像を手放せません。自分ではなく相手を無理やり整形手術しているような関係に陥ってしまいかねません。
「あなたはふさわしくない。この場所から出ていってください。」
自分のからだがこんな声を発していたら、心は逃げ出すでしょう。またこんなひどいセリフを聞かないように、自分の安全な場所を確保しようと躍起になるでしょう。ビクビクと緊張が体と心を支配しますから、自分のやりたいことや本当の気持ちも隠れてしまいます。
また私の完璧主義が禍した、そして無理をし過ぎて、周りに当たり散らした、人間関係がほんとうにうまくゆかないと感じていたら、トラウマ治療をおススメしております。自分のトラウマ体験を治療することで、自分の孤独と上手につき合えるようになった、相手をコントロールしなくなった、そして私とパートナーの実像に出逢うことができましたというクライエントの皆様にたくさん出会っております。
お互いの孤独に向かって「あなたもそうなの?わたしもなの。」と呼びかけること、微笑むことが我々人間にできる精一杯の理解とリスペクトです。
自分と相手への「やさしさ」や「受容」、「寛容」、「真心」、「誠意」、「信頼」は、あなたのすぐそこにきっとあります。
●ご興味のある方はこちらからご予約を頂けます。
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