機能不全家族 2022/06/02 (木) 12:13 PM
養育者の家庭環境に以下の経験があると、その子どもは身体的虐待、心理的虐待、性虐待、ネグレクトなどお受けやすくなる可能性が考えられます。
1.父又は母が常に身体的苦痛を訴えている
2.父又は母にアルコールやギャンブル、仕事等への依存症がある
3.母又は父が共感性に意味を見出せない
4.母又は父が常に家計の逼迫する状況に苦しんでいる
5.父が元気だと母は落ち込み私に相談する、
6.私と母が元気になると父が抑うつ的になる
7.私が過食と拒食を繰り返すと父と母は結束
子どもは親を選べません。そして親なしで独立して生活することもできません。それ故、子はたとえ生きづらさを感じていたとしても、自分が生まれ育った家庭環境には間違いはないと感じなければなりません。
親の言いつけどおりに生活し、「わたしは~がしたい」という感情を封印しないと親の養育を失うのではないかという不安や恐怖を感じることになります。
「親から叱られるのはわたしが悪いからだ」、「バカだからだ」と自己否定をしながら、自分の「生きづらさ」を感じないようにしないとこの家では生きてゆけないと感じています。後年、自我の目覚める年齢に達すると、それは正体不明の「生きづらさ」として表れはじめます。
「親は愛情から、わたしを叱り、時には体罰もするんだ」という家族像の理想化に支配されます。子どもの自我が発達しはじめ、その理想化に対して「何かおかしいぞ?」と子の無意識が感じた時、それは過食や拒食として表現されたりします。
なぜならば、親は無意識に親を否定してはいけないというメッセージをわが子に送り続けているからかも知れません。子どもは言葉で訴えることができません。それ故に過食や拒食、リストカットなどで表現しなければなりません。こうした愛ある家族の幻想に支配されている状態は、家族機能不全と呼ばれています。
『休養・こころの健康』と題して、厚生労働省のホームページでは「活き活きと自分らしく生きる条件」として以下の3つを挙げています。
1.自分の感情に気づいて表現できること(情緒的健康)
2.状況に応じて適切に考え、現実的な問題解決ができること(知的健康)
3.人生の目的や意義を見出し、主体的に人生を選択すること(人間的健康)
こうした情緒的、知的、人間的健康を願わない人がいるでしょうか。人間であれば本能的に「健康であること」を願っています。子どもを母が出産するとき、医師、助産婦、看護師は、母子の健康と安全を確保するために様々な医療的処置を施します。
間違っても不健康で危険になるための医療的処置を取ることはあり得ません。生まれて成長することは、「健康であることへの願い」でもあります。こうした願いは、安定した家庭環境の中で実現してゆきます。
このように「心と体が健康であること」こそ、家族機能本来の役割であり、わが子に対しての親が行うべき本来の役割と言えます。そしてその家庭環境は子どもに「活き活きと自分らしく生きる条件」を与えてくれます。
親が養育を放棄し、虐待やネグレクトのある家族機能不全の家庭で育った子どもは、その家族像を理想化して何物にも換えがたい居場所を心に形成します。それが心と体にとって、どれだけ不健康でストレスフルであっても、理想化します。
なぜならば理想化された家族像を手放したときに、自分の居場所を失う恐怖、親も家庭も家もない恐怖を子どもは知っているからです。この家庭内恐怖を封じ込めるために、以下に挙げる状況を見て「私はそんな家庭環境で育ってはいません」と心のどこか表現できない場所で否認し続けます。
これが家族機能不全によって起きる家族愛の幻想かも知れません。親が子どもに恐怖と怒りを表現させない家庭環境は、メンタルの問題にまで到達しないと出口を見出せない多くあります。
・親の期待が大きい
・他人の目を気にする
・家の中と外でその性格が全く異なる親だった
・溺愛
・過保護
・過干渉
・感情のコントロールができない親がいた
(発作的に怒り出す)
・子である私が心理的にも身体的にも親をケア
してばかりいた
・虐待があった
それ故に、いわゆるA.C(アダルトチルドレン)と呼ばれる人たちには、同じ境遇の人たちで集まり語り合う自助グループや公的機関のサービスによって、自分の抱えているトラウマストレスに圧倒されないための安全な居場所が不可欠です。心理カウンセリングもこうした居場所のひとつとなります。
家族機能不全の環境は、養育者によって親と子の愛着が形成される場所であり、人格形成に大きな影響を与えます。親の身体疾患、精神疾患、発達障害、貧困、トラブル、父と母の不和などが、あって当然と思える環境に長く生活しなければならない状況は、感情の鈍麻、解離症状、空想癖、インターネットゲーム依存などによってバランスを取ろうとするかもしれません。
そして成人しても引きずってしまう虐待トラウマによって、以下のような問題を誘発します。
●物質関連障害および嗜癖性障害群
ギャンブル、飲酒、インターネットゲーム、性、恋愛、人間関係(共依存)等の依存症
●心的外傷およびストレス因関連障害群
心的外傷後ストレス障害、反応性愛着障害、適応障害など
●食行動障害および摂食障害群
拒食と過食を繰り返す摂食障害など
解離性同一性障害、離人症、解離性健忘など
上記の症状が娘又は息子に見られても親は「またいつもの」くらいにしか感じていない場合もあります。自傷行為や引きこもりが長期化して底を着くと、ようやく親は「我が家はおかしいのかもしれない」と思いはじめます。
「心と体が健康であること」に無関心で、他者への献身的、道徳的な態度を過剰に尊重する人がいます。まさしくその過剰さを過剰と思わずに突き進み、他者への奉仕を続けます。適度さを欠いた献身ぶりは、継続すると支配的になりはじめます。何かに過剰である時の心理に客観的な判断は失われがちです。
たとえば、尽くされる側の人はお祝いでもない時に、尽くす人から不要なプレゼントをもらったりします。手伝わなくてよいことに介入されたりします。家族の一員のようにプライベートに踏み込まれたりします。この間、尽くす側はとても元気で笑顔に包まれます。
「ありがとう」、「助かった」などと感謝されるとさらに活き活きと躁状態になります。しかし、この躁状態の裏側には、「絶対に裏切らないで!」という強い不安、怒り、寂しさ、イライラとストレスが隠れているかも知れません。尽くされる側は、「いづれこの人を見捨ててしまう時がくる」とわかっています。そして、どのように距離を取ればよいかと悩んでしまいます。
家族機能不全の家庭で育ち、幼少期に母親からの関心が薄かった子どもは成人すると、休養や休憩がうまく調整できず、人一倍ストレスフルに過剰に働くことで「見捨てられ不安」を解消します。それは同僚や上司、友人などの他者から「頑張っているね」や「少し休んだ方がいいよ」、「いつもありがとう」という声掛けを無意識に待っている心理状態です。
歪んだ自己表現は怪我や病気によって注目されることで「見捨てられ不安」を解消します。わざと危険なことをしたり、危ない橋を渡ろうとしてしまいます。
親からの関心に飢えたまま成人すると、その願望を今度は他者に投影します。病弱な人や困っている人、具体的にはアルコールやギャンブルの依存症がある人をパートナーにする、うだつが上がらない不器用な人を応援したくなる、孤独を好み共感性に価値を見出せない自閉症スペクトラム障害の人を明るく元気にしたい欲求にかられるなどです。
ところが、パートナーの依存症の問題が回復すると、当人は「なんでこんな人の側にいるの?」という疑問が湧きはじめ、依存症者が健康になりはじめると掌を返すようにパートナーに関心がなくなります。
あるいは問題を抱えていた人が、ようやく軌道に乗りはじめ、経済的にも安定しはじめると、「なんでこんな人と生活していたのか?この人は誰なの!?」という疑問が湧きはじめ、以前のような思いやりも消えてゆきます。
さらに、自閉症スペクトラム障害の方を社交的にしようとしたり、情緒的なふれあいの素晴らしさを教えてあげたいという努力が長期化しても叶わず、強烈な孤独感を抱えてうつ病と怒りの問題を抱えます。いわゆるカサンドラ症候群です。
家族機能不全の環境で育ったアダルトチルドレンと呼ばれる人は、理念としては心とからだの健康のことや家族の幸せを頭の中で知っていても、それに悪態をつくような行動が無意識化で起きています。ある種の陶酔感が伴う破壊衝動であり、危険な場所や損する環境を選んだり、つきあっても害しか生まれない人を好みにしたりします。まるで家族トラウマが過去の家庭環境の再演をしているかのようです。
家族機能不全の親子は、親も子も虐待トラウマに支配されているため、本来の自分の感情や欲求を凍結してしまうかも知れません。そのため親は子に依存しているとは思いません。子は問題のある環境を劣悪とハッキリとは感じません。子はそれを虐待、嗜癖、生活の困窮、秘密(口止め)とハッキリ感じないようになっています。
つまり、親も子も、どちらも親子でありながら本来の姿を知らない関係性の中で生きているかも知れません。非常に孤独で不安な、見捨てられた世界に閉じ込められていますから、何かにしがみつきたくなります。すると、しがみつきの対象としてわが子を選択しますし、その子も未来において同じようにわが子にしがみつくようになります。
親は虐待行為を躾や道徳感情と取り違えているかも知れません。これもトラウマによる支配で大きな勘違いが起きているかも知れません。虐待経験のトラウマに支配されていると、自分の行為への客観性が失われます。
この道徳感情を躾に置き換えて、罪悪感と自己否定感を与えてわが子をコントロールしていても、客観的な判断が封印されているため、怒っても、恐怖心を与えても、折檻しても、秘密を作っても効果などないことに気がつけません。トラウマ支配の恐ろしい側面かも知れません。
「父や母がケンカをするのは、私がいるからだ」
「父と母が困らないように、もっと役に立たなくては!」
もしも子がそれを虐待、嗜癖、生活の困窮、秘密(口止め)感じてしまったら、家族同士の働きや役割が崩壊します。子にとってもそれは家庭という居場所を喪失するのではという恐怖や不安となります。
躾と虐待の取違いには、過去から連綿と続く親のまた親による虐待の連鎖があり、この虐待トラウマに気がつきコントロールすることが、人生を大きく変化させ成長を促します。
家族機能不全の親子関係は、健康な家族に比べて非常に脆弱な構造になっています。この脆弱さを補強するために、親は子を虐待などの方法を使ってコントロールします。
恐怖心を与えられると、快不快、正しいか間違っているか、したい/したくないという自分自身の判断ができなくなります。親は子がルールを破ると、こどもをさらにコントロールしようと折檻します。裏切り行為への監視は過度となり、その反動により、家庭内で秘密(口止め)を作りはじめます。
思考の伴わない虐待行為を発作的にしてしまう親には、この見捨てられ不安のトラウマの問題が顕著に見られます。無意識の奥底で、その親は「俺を独りにするのか!わたしをひとりにしないで!」と叫んでいます。それは親の親の、そのまた親の声なのかもしれません。
秘密を作る心理は、強固な共同体の結束をより強固にします。しかし、親には裏切るのではという不安が絶えず頭によぎることになります。
この脆弱構造から、何度も確認する。門限が厳しい。規則に少しでも外れると、病的なほど子どもを追い詰め、自分の不安が治まるまで尋問や折檻をします。不安が治まった心理状態とは、「尋問や虐待で長時間苦しめていてもこの子は私を親と思ってくれている、苦しめても、お父さんの言う通りです、お母さんが正しいです」と言ってくれている、こうした満足感を求めて虐待や尋問をします。
虐待はますますエスカレートします。こんなことをやってもこの子は正しいと言う、次はこんなに厳しい規則を課してみようとします。「見捨てられ不安」の恐ろしくもおぞましい一側面ですが、虐待行為への発作的で思考を失った習慣を、その親は幼少期に自分の親から躾として身に着けています。虐待の連鎖はこうして繰り返されます。
このように考えますと、過干渉も過保護も保護でも干渉でもなく、ただ単に親が安心したいがためだけの過確認と言えるのではないでしょうか。
家庭内での長期的な虐待によるトラウマをもつ人は、過度の緊張感の中で生き続けています。その過度の緊張感には、この心のフタが開いて、本音が飛び出したらどうしようという不安も共存しています。家族像の無理な理想化が、心のどこかで張りぼてのように脆いものだと気がついているからでしょうか。具体的には、
「あの厳しい父の前で、門限を平然と破ることなど恐怖の沙汰だわ!」
「父と別れた母の寂しさが私に響いてくる、自分は楽しい旅行に出掛けるなんてバチがあたるし、考えてはいけない」
「ケンカの絶えない父と母を残して、私が一人暮らしをしたら、この家族を私が地獄に落としたことになる」
「私がうまく立ち回れば、この家族は時々笑顔になる。この笑顔のために恋愛や結婚は当分お預けか、、、」
こうして、人の顔色を伺いながら生活する癖は形成されます。
FAP療法は、家族トラウマが原因の緊張感と不安や恐怖を、共感性の脳神経細胞のミラーニューロンを心理カウンセラーが活性化することによって、クライエントの方の緊張や不安、恐怖のレベルを短時間で緩和させる心理療法です。
恐怖や不安、緊張した体のこわばりを、心理カウンセラーが催眠によって共鳴することで、不快な理想化や信念や認知よりも大事なことは、「わたしが~したい」を呼び覚まします治療をモットーに、皆様に寄り添っております。
自分の実像が客観的にわかり「わたしは~したい!」と思えた時、皆様の才能は一気に開花していきます。
機能不全家族について、その問題の背景と親子関係についてご説明を致しました。機能不全家族の問題から、アダルトチルドレンやその他の様々な問題が派生します。大人になっても「生きづらさ」として、影響を及ぼしてしまいます。
カウンセリングルームグロースでは、家族問題やアダルトチルドレンの問題を専門とする相談室です。機能不全家族を背景とする様々な問題についてご相談をお承り致しております。
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