FAP療法, アダルトチルドレン, カウンセリング, トラウマ治療, 横浜, 複雑性PTSD 2021/10/08 (金) 1:59 PM
近頃は、複雑性PTSDの論文を淡々と読み進めています。幼少期のトラウマからの回復というテーマに非常に興味があり、気がついたら複雑性PTSDの領域について突き進んでいたという感じであります。
アダルトチルドレンとかHSP等の問題も、この問題から来ているのではないかなって、日々お会いするクライアントさんの変化から感じたりします。
複雑性PTSDと言っても、非常に領域が広い感じであります。児童虐待の後遺症、兵士のトラウマの問題など幅広い分野があります。
その中で一つ興味深い論文を発見しました。
それはAlexandra Howard (2021)の書かれた「オーストラリアの現役もしくは退役軍人の複雑性PTSD(ICD-11)の罹患率とその治療について」という論文であります。
総勢480人の現役、退役軍人のトラウマ状況について調査した論文です。
その中で複雑性PTSDに罹患していたのは全体の78.2%, PTSDに罹患していた人は全体の21.8%だったというのです。
複雑性PTSDとPTSDの症状レベルを比較すると複雑性PTSDの方が症状が重く、日常生活や人間関係の質のレベルが低かったというのです。それだけ複雑性PTSDの問題を抱えていますと、「生きる」という事に問題を抱えてしまうのだなと思うのです。
また興味深いのが統計的に治療効果を証明されている治療法(恐らく認知行動療法だと思われます)を用いて治療初期、介入後、3ヶ月後の時期でその状況を把握した結果、双方のグループで症状のレベルが減少したのですが、複雑性PTSDの治療結果はPTSDの初期のスコアと同じレベルだったというのです。
つまり複雑性PTSDについてトラウマ治療を提案しても、依然として高いレベルの症状を抱えているというのです。
同じ治療法でPTSDと複雑性PTSDの問題に介入しても、治療結果はでるけれど複雑性PTSDでは症状レベルは高いままということなのです。
つまり複雑性PTSDの治療法というのは、もう少しPTSDの治療法とは異なった側面の必要性があるのだという事です。
「なるほどな~」って思いました。
そんな時、師匠の大嶋先生がご提唱しているFAP療法が良いかも知れないと思いました。
2018年に学会発表させて頂いた結果では、35人のトラウマの問題を抱えた方々にFAP療法を用いて治療的介入をさせて頂きました。その際、トラウマの問題、日常生活の適応レベルについての2つの側面について状況を把握させて頂きました。
治療後の結果は、それぞれの症状と適応状態の改善がありFAP療法はトラウマ治療に有効でありました。
まだまだ複雑性PTSDのカテゴリーについて細かい点を見ていく必要があるかと思います。当相談室にご来室される幼少期からのトラウマを長期的に抱えている問題に対し、治療的に有効であるという事が考えられるのです。
これからまた淡々と複雑性PTSDの論文を読み進めながら、「世界の領域でどんな風になっている?」ってことを見て行きたいと思います。
●カウンセリングをご希望の方は、こちらをご確認下さいませ。
<参考文献>
・Alexandra Howard et al: Prevalence and treatment implications of ICD-11 complex PTSD in Australian treatment-seeking current and ex-serving military members, European Journal of Psychotraumatology,12(1),2021
•大塚 静子、 大嶋 信頼 :トラウマ治療の有効性について: FAP療法を用いてトラウマ治療を行った研究 . 第34回国際トラウマティックストレス学会.ワシントンDC. 2018
• (Shizuko Ohtsuka, Nobuyori Ohshima:Efficacy of trauma therapy Clinical study on FAP therapy for psychological trauma, International Society for Traumatic Stress Studies 34th Annual Meeting, Washington,DC, 2018)
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