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複雑性PTSD

新たな”私”の世界を創って行く

複雑性PTSD   2024/03/29 (金)  4:36 PM

私はアメリカボストンでトラウマ臨床をやっておられる、ジュディスハーマン先生を敬愛しています。『心的外傷と回復』の著書は有名であります。ボストンにおいて被害者援助プログラム(Victims of Violence Program :VOV)を運営されていらっしゃる精神科医の先生であります。

 

先生は家庭内暴力、性的虐待等の長期的な心的外傷の問題について早くから注目され、複雑性PTSDついて提唱されていらっしゃいます。

 

ジュディスハーマン先生は、長年にわたり性的虐待、家庭内暴力のサバイバーの方々のお話を聞いていかれる中、どのようにサバイバー達がそれまでの暴力の世界とは違った、新しい世界を構築して行くかについて注目していたそうです。

 

そしてサバイバーの対人関係のトラウマと支配関係について、3つの役割があると仰っておられました。加害者(Perpetrators)、犠牲者(Victims) 、共謀者(Bystanders)の3つの役割があるとしています。

 

犠牲者(Victims) は加害者(Perpetrators)の下位にいさせられ従わされている存在。共謀者(Bystanders)は本来やる事を分かっていながらやらない人、もしくは加害者(Perpetrators)と共謀している存在。そしてそのそれぞれの関係の中で利害関係がある関係でもあるとしています。そのような暴力の世界では、正義(Justice)が無いとしています。

 

トラウマからの回復では、再び新たな世界をイメージして行く事としています。そしてその回復の世界では相互性、公平性という要素が適合され、また「正義」という要素は大切なポイントとしている。公平性の感覚でもって再び新しい世界を構築して行くとしています。

 

ジュディスハーマン先生のお話を聞くにつれて、「納得だな~!」って事を私は実感します。

 

幼少期のトラウマの問題を抱えていますと、先生が仰っておられるように力を奪われてしまうということが、これらの3つの役割の中で組み込まれてしまっていると感じます。

 

いわゆるスケープゴートとしての役割を負わされ、そして暴力と力の乱用による搾取の世界を生きさせられる事は、語弊がありますが絶望の世界とリンクする部分があると実感します。先生は「その世界には正義がない」と仰っていますが、まさにその通りだなっと感じます。

 

トラウマからの回復では、新たな世界を創って行くという事が一つの大きなポイントだなと私自身も実感致します。「力を奪われた存在」から、また別の戦場を乗り越え、そこから生きる意味を見出し、生きる力を取り戻し、新たな世界を創って行く事。それがトラウマサバイバーとしての回復のステップであると感じます。

 

多くの方々がご来室されていらっしゃいます。皆様、回復と共に、しなやかに力をつけてこられ、新たな光の世界を生きていかれます。そこには一体感と調和の世界があるのですよね。

 

そんな事を先生のお話を伺うにつれて思うのでした。

 

※第35回 国際トラウマティックストレス学会の講演記録

「 Truth and Reconciliation: Envisioning Justice from the Victim's Perspective」

 By: Judith Herman

 

●ご興味のある方はこちらからご予約を頂けます。

 

【執筆者情報】

 大塚  静子

 

資格

  • 臨床心理士(NO:18162)
  • FAP療法上級資格取得

 

所属学会

  • 日本臨床心理学会
  • 日本ブリーフサイコセラピー学会
  • 国際トラウマティックストレス学会
     (International Society for Traumatic Stress Studies)

 

経歴

  • 2005年 アライアント国際大学/カリフォルニア臨床心理大学院 臨床心理学
    修士課程卒業
  • 2005年7月 アルコール依存症専門病院、周愛利田クリニックにて依存症治療に携わる。
  • 2009年7月 アダルト・チルドレン第一人者の斎藤 学先生がやっておられるIFF・CIAP相談室勤務。家族臨床、トラウマ治療について研鑽を積む。
  • 2014年7月 横浜にてカウンセリングルーム・グロース設立。
  • 2015年4月 浦和大学 総合福祉学部 非常勤講師 「心理療法」,「精神保健学」担当

 

研究実績

研究実績はこちらをご参照下さい

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