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アルコール依存症

アルコール依存症とは

世の中ではまったくお酒を飲まない人から、普通にお酒を楽しむ人、また大量に飲酒してしまう人まで様々であります。通常、飲酒量が増えるにしたがって、アルコール問題と重症度は増加していく傾向となります。アルコール依存症はその中で最も重症度が高い部分に位置しています。

 

アルコール依存症までには至らないけれど、アルコール関連問題を有する場合アルコール乱用の問題もあります。アメリカ精神医学会によるDSM-IV-TRでは「アルコール乱用(alcohol abuse)」と呼ばれています。アルコール乱用とは、社会的または家族的問題がある場合に診断されます。

 

例えばアルコールによる失業、離婚、飲酒運転等、大切なものを失ってしまう場合等をさしています。「アルコール乱用」は、何らかのアルコール関連問題があるけれど「離脱症状」や「連続飲酒」がない場合を言います。

 

【離脱症状】

飲酒が続きアルコールがいつも体に入っている状態が続く事で、体がその状態に適応した態勢をとります。その後アルコールが抜けてき来た際、そのバランスが崩れた事で出てくる様々な症状を「離脱症状」と言います。

 

【連続飲酒】

「連続飲酒」とは、常に一定濃度のアルコールを体の中に維持しておくために、数時間おきに一定量のアルコールを飲み続ける状態をさしています。アルコール依存症の重要な診断根拠とされています。

 

このようにアルコール問題は、飲酒量と重症度が増加して行きます。

飲酒を続けていればアルコール依存症は進行し、身体の病気や事故等の問題を引き起こしてしまい、「大切な人生」を壊しかねない状況となる場合もあります。そのため早め早めにアルコール問題に気がついて行く事で、ご自分の「大切な人生」を取り戻して行く事が可能となります。

 

以下にアルコール依存症の症状、影響力、その治療についてご説明いたします。

アルコール依存症の症状 

アルコール依存症の症状は「精神依存」、「身体依存」、「耐性」の3つに分けられます。

 

【精神依存】

アルコールに対する強い飲酒欲求がある状態です。そのためコントロールが効かない飲酒をしてしまいます。例えば、お酒を飲むべきでない時に飲んでしまう、飲み始めると飲む前に思っていた量より多く飲んでしまう、時間的に長く飲んでしまう等があります。これらの飲酒行動を「コントロール障害」と言います。コントロール障害の例では「連続飲酒」と呼ばれる状態があります。

 

【身体依存】

酒を止めたり、また飲酒量を減らした時に「離脱症状」が出現する状態です。

離脱症状の例として、手の震え、発汗(寝汗)、高血圧、嘔気、嘔吐、下痢、不眠、うつ状態、イライラ感、不安感、痙攣発作、幻覚等があります。

 

【耐性】

お酒に強くなって行く事です。例えばお酒を飲み始めた頃には日本酒1杯で酔っていたけれど、最近はその程度の飲酒量では全く酔わなくなってくる状態です。

アルコール依存症の問題

アルコール依存症は心、身体、家族、職業等の様々な領域に影響を及ぼします。

 

【心の影響】

アルコール依存症では、うつ病や不眠症等の精神症状を生じる事があります。

眠れない場合、アルコールを飲んで眠ろうとされる場合があります。その場合、長期的にアルコール不眠症等の睡眠障害を引き起こしてしまう事もあります。また沈んだ気分を持ち上げる為にアルコールを飲んでいる場合もありますが、アルコールの抗うつ効果は一時的なもので長期の飲酒はうつ状態を増悪させると言われています。

 

またアルコールは幻視、幻聴、嫉妬妄想、てんかん発作、せん妄等の症状を引き起こすこともあります。また慢性的な飲酒が続くと脳萎縮の原因ともなり、アルコール性の認知症になってしまう場合もあります。

 

【身体の影響】

脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変、食道炎、食道静脈龍、食道癌、急性胃炎、急性胃潰瘍、マロリー・ワイス症候群、慢性胃炎、十二指腸潰瘍、急性膵炎、慢性再発性膵炎、糖尿病、痛風、アルコール性心筋炎、アルコール性弱視、難聴、脳萎縮、栄養障害性アルコール脳症、アルコール関連痴呆など、アルコールは様々な身体疾患を引き起こします。

 

内科や外来等でこれらの身体疾患の治療を受けた場合、これらの症状の治療だけになってしまいがちになります。それは再びお酒を飲める体に戻るだけとなります。その為、根本的なアルコールの問題に向き合って行く事が重要となります。

 

【家族への影響】

アルコール問題は家庭内問題も引き起こします。酩酊状態での家庭の影響は、DV、家庭内暴力、暴言や、子供への虐待、ネグレクトを引き起こし、飲酒問題は家庭内で多くの混乱を引き起こします。

 

またアルコール依存症家庭で育った子供が受ける精神的影響もあります。子供が大人になった後もその影響は続き、うつ病、複合性PTSD、摂食障害、アルコール依存症、不安症、対人関係の問題等を引き起こすと言われています。

 

【社会的影響】

アルコール依存症は、社会的側面にも影響を及ぼします。職場での遅刻や欠勤、病欠や休職、失職の原因となります。また飲み会などのお酒の場面での対人関係上の問題も浮上する事もあります。よって経済的困窮を引き起こします。これらが家庭崩壊の原因となる場合もあります。

アルコール依存症とトラウマ(見捨てられる恐怖)

アルコールを始め様々な依存症問題(薬、食べ物、ギャンブル、インターネット等)は、幼少期のトラウマ(見捨てられる恐怖)と関連していると言われています。幼少期における様々なトラウマ、例えば原家族において母親との関係で安心した関係を構築できない状況では、子供の心の中に「見捨てられる恐怖(トラウマ)」を抱えてしまうのです。

 

原家族における家族問題は様々です。例えば兄弟が病気や様々な問題を抱えており、両親が兄弟にだけ関心を向けて、ご自分に関心が向けられない場合「見捨てられる恐怖」を抱えてしまう場合もあります。

 

また実際に父親がアルコールの問題を抱えており、家で暴力や暴言が飛び交い、その為家族の中が緊迫した状況の中、母親から十分なケアを得られずトラウマを抱えてしまっている場合もあります。

 

このような「見捨てられる恐怖(トラウマ)」を抱えてしまっている場合、現在の日常生活の中で「見捨てられる恐怖」を刺激するような出来事に遭遇した際、根底にあるトラウマ(見捨てられる恐怖)が刺激される事があります。「見捨てられる恐怖」が刺激される事で、冷や汗や手が震え、腹痛等の身体的症状が出て来る場合もあります。

 

このような時、その一種のパニック状態を落ち着かせる為に飲酒するのです。

一時、飲酒によって陶酔感が生じ眠りに入る事ができます。その際、根底にある「見捨てられる恐怖」は否認されます。

 

しかしこのお酒の陶酔感から醒めた後、再びパニック状態に陥って再飲酒するサイクルとなるのです。そのサイクルによって連続飲酒発作状態に陥ってしまう場合もあります。

 

このようにアルコール依存症の問題の背後には、幼少期におけるトラウマ(見捨てられる恐怖)が大きく影響しているのです。

アルコール依存症の治療

先に述べました様に、アルコール依存症の根底には「見捨てられる恐怖」の問題があり、そのトラウマの恐怖を落ち着かせる為、飲酒してしまう悪循環のサイクルが出来上がってしまっているのです。

 

幼少期からの「見捨てられる恐怖」を抱えていますと、様々な人間関係のストレスや葛藤等によって飲酒という展開となってしまうのです。それらのストレスが、根底にあるトラウマに過度に影響を及ぼしてしまうのです。

 

初回面接ではお酒の問題の背景となる家族歴、幼少期からの生育歴について丁寧にお話をお伺いさせて頂きます。そして現在抱えておられるお酒の問題が「どのトラウマから引き起こされているか?」について確認させて頂きます。

そして2回目以降の面接から、根底にある「見捨てられる恐怖」についてFAP療法を用いトラウマ治療をご提案させて頂きます。

 

FAP療法を用いトラウマ治療を進めていく事により、根底に抱えている恐怖(トラウマ)が次第に解消されて行きます。そしてお酒等の依存の対象物に嗜癖する傾向が、少しずつ緩和して来られます。次第に依存の対象物に支配されるのではなく、ご自分の生活や人間関係を守りながら日常生活を送って行ける様になられます。

 

これまで幼少期に抱えていた「見捨てられる恐怖(トラウマ)」があるがために、その恐怖を落ち着かせるために依存の対象物(お酒)が必要だった。

しかし逆にその事によって大切な生活を脅かしてしまう悪循環となってしまっていたのです。トラウマの問題から解放されるにつれて、ご自分の「本来ある力」を取り戻し大切なものを守りながら生きられる様になって行かれます。

 

 

ご家族について

アルコール依存症の家族は、当人のお酒の問題に巻き込まれてしまう場合は良くあります。お酒を飲んでいる本人に対し、良かれと思って「お酒を飲まないように」と対応する事が結果的に飲酒を促してしまう事は良くあります。

 

そのため家族メンバーが、アルコール依存症について理解して行く事も非常に大切な取り組みとなります。ご家族の対応が変化して行くことで、ご本人のお酒に対する向き合い方も変化が生じて行きます。ご家族にアルコール問題を抱えておられる場合、ご家族メンバーの方のカウンセリングも有効となります。是非ご相談頂ければと存じます。

 

●カウンセリングをご希望の方は、こちらをご確認下さいませ。

 

【参考文献】

・斎藤 学, アルコール依存症とは何か, 株式会社IFF出版部 ヘルスワーク協会,        1988

・斎藤 学, アルコール依存症の精神病理, 金剛出版, 1985