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災害トラウマについて

災害トラウマとは

●はじめに

災害は多くの人々にとって予期しない出来事であり、大きな心理的負担をあたえます。災害によって健康が脅かされたり、仕事や日常生活に大きな変化や、将来の生活への不安がもたらされることがあります。このような重大な出来事の後で心身の変調をきたす事は人間の「正常」な反応と言えるでしょう。

 

多くの場合には生活の再建と共に心の健康も回復していくですが、精神的な影響が長く続く場合もあります。これらの診断として不安障害、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)等が挙げられます。その他にもストレスへの対処行動として、飲酒や喫煙の増加が起こることもあります。

 

これらの反応は、不安な状況がもたらす心身の反応であり異常なことではありません。身の回りの安全を確保し安心感を与えることで多くは回復していきます。

 

以下に災害時におけるストレス反応を述べます。

 

●PTSDとは(PTSD:Post -traumatic Stress Disorder)

通常、辛い体験による心の傷は時と共に癒されて過去の経験として整理されていきます。そのため人は心の傷を抱えながらも「今」を生きることが出来るのです。それが出来なくなった状態がPTSDです。

 

耐え難いトラウマの体験を過去の経験にすることが出来ず、トラウマにまつわる恐怖や無力感等が現在の生活を損なってしまうのです。PTSDは心の傷の後遺症とも言えるでしょう。

 

例えば、新型コロナウィルス(COVID-19)による死の恐怖に直面された方々、大地震災害で多くの人の死を身近に目にした人達、航空機事故の現場で仕事をしていたスタッフ、原発事故の被害者等、そのような後遺症がしばしば見られます。

 

●どんな症状を経験するか?

PTSDの症状は、災害後のストレス反応が慢性化したようなものです。死の恐怖や自分の安全を脅かされる恐怖に囚われ、今現在の生活に適応していくのが難しくなります。

 

辛いトラウマの出来事の場面を繰り返し思い出し、それが今まさに目の前で起こっているように感じられたり、夢に見たりします。その出来事を思い出させる場所、人、会話を避け、周囲のことに興味が持てなくなってしまいます。生き生きとした感情を失い、孤立感を味わい眠れなくなります。

 

それらの症状は「異常事態に対する正常な反応」と言えます。

当相談室では安全かつ短期間に効果を期待できるFAP療法を用い、トラウマにまつわる症状改善に取り組ませて頂いております。

 

●PTSDの診断基準(DSM-5)

  • A 実際に危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴行を受ける出来事への、以下のいずれか1つの形による暴露。
  • (1)心的外傷的出来事を直接体験する。
  • (2)他人に起こった出来事を直に目撃する。
  • (3)近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。
    家族または友達が実際に死んだ出来事または危うく死にそうになった出来事の場合、それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない。
  • (4)心的外傷的出来事の強い不快感を抱く細部に、繰り返しまたは極端に暴露される体験をする。

 

  • B. 心的外傷的出来事の後に始まる、その心的外傷出来事に関連した、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の侵入症状の存在。
  • (1)心的外傷的出来事の反復的、不随意的、および侵入的で苦痛な記憶。
  • (2)夢の内容と感情またはそのいずれかが心的外傷的出来事のに関連している、反復的で苦痛な夢。
  • (3)心的外傷的出来事が再び起こっているように感じる、またはそのように行動する解離症状。
  • (4)心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内容または外的なきっかけに暴露された際の強烈なまたは遷延する心理的苦痛。
  • (5)心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内的または外的なきっかけに対する顕著な生理学的反応。

 

  • C. 心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避、心的外傷的出来事の後に始まり、以下のいずれか1つまたは両方で示される。
  • (1)心的外傷的出来事についての、または密接に関連する苦痛な記憶、思考、または感情の回避、または回避しようとする努力。
  • (2)心的外傷的出来事についての、または密接に関連する苦痛な記憶、思考、または感情を呼び起こすことに結びつくもの(人、場所、会話、物、状況)の回避、または回避しようとする努力。

 

  • D. 心的外傷的出来事に関連した認知と気分の陰性の変化。心的外傷的できの後に発言または悪化し、以下のいずれかの2つ(またはそれ以上)で示される。
  • (1)心的外傷的出来事の重要な側面の想起不能(通常は解離性健忘によるものであり、頭部外傷やアルコール、または薬物など他の要因によるものではない。
  • (2)自分自身や他者、世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予想。
  • (3)自分自身や他者への非難につながる、心的外傷的出来事の原因や結果についての持続的で歪んだ認識。
  • (4)持続的な陰性の感情状態(例:恐怖、戦慄、怒り、罪悪感、または恥)
  • (5)重要な活動への関心または参加の著しい減退。
  • (6)他者から孤立している、または疎遠になっている感覚。
  • (7)養成の情動を体験することが持続的にできないこと。

 

  • E. 心的外傷的出来事と関連した、覚醒度と反応性の著しい変化。心的外傷的出来事の後に発言または悪化し、以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される。
  • (1)人や物に対する言語的または身体的な攻撃性で通常示される、いらだたしさと激しい怒り。
  • (2)無謀なまたは自己破壊的な行動
  • (3)過度の警戒心
  • (4)過剰な驚愕反応
  • (5)集中困難
  • (6)睡眠障害

 

F. 障害の持続(基準 B,C,DおよびE)が1ヶ月以上

 

G. その障害は臨床的に意味がある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

 

ストレス反応への上手な対応

●トラウマ反応は「異常」な事態への「正常」な反応です

不安感は、集中力や判断力の欠如・対人関係の支障も招いてしまいます。災害後には、家族の親密な関係に亀裂が生じることも良くあります。ちょとした揺れや物音への過敏に反応したりすることもあります。

 

これらは「異常な事態に対する、正常な反応」なのです。自分を取り巻く状況そのものが異常なのですから、普通の生活では経験しない次のような反応が起こってくるのは当然のことなのです。

 

<心理・感情面>

不眠・恐怖の揺り戻し・強い不安・孤立感・意欲の減退を体験します。イライラ・落ち込み・怒り・生き残ったことへの罪悪感に襲われ、激しい感情の起伏。

 

<身体面>

頭痛・手足のだるさ・筋肉痛・胸の痛み・吐き気。免疫機能が下がるためアレルギー症状がひどくなったりする場合もあります。

 

<思考面>

集中力の低下。混乱・無気力・短期的な記憶喪失・決断力の低下。他の選択肢を考えたり優先順位をつけるなどの合理的な判断が難しくなり、一つの考えに固執してしまう。

 

<行動面>

過敏傾向になり、家族の中でちょっとしたことで喧嘩。人間関係のトラブルが起こりやすくなります。引きこもってしまい、周囲との接触を拒否する場合もあります。お酒やタバコの量の増加。食べられない・食べすぎるなどの問題も出てきます。

 

こうしたストレスは「正常な反応」であり大抵は時と共にも薄らいでいきます。

 

●セルフケアについて

ストレス反応は一時的なものですが、時にはこれが深刻なストレス障害となって長引くこともあります。障害を予防し回復を早める為にセルフケアは非常に大切です。

 

・深呼吸しリラックスする。

・ストレッチ・ヨガ。

・筋トレ。

・楽しみを見つけて気分転換。

・お酒で紛らわさない。

・栄養のバランスをとる。

・計画を立て、無理をしない。

・自然(緑・花)を楽しむ。

・生活のリズムを意識して整える。

・日々のルーティンワークを大切にして動いてみる。

 

こちらにセルフケアストレッチについてのサイトがございます。

ご参考にして頂ければと思います。

 

●災害トラウマからの回復

トラウマの症状は「異常な事態に対する、正常な反応」です。災害時の異常事態における死の恐怖に直面させられた時、その恐怖と記憶が整理されない状況が引き起こされるのです。

 

その結果、日常生活で災害時のトラウマの恐怖が繰り返し蘇って来たり、それまで感じられていた生き生きとした感覚を感じられない(解離症状)等の症状が起こってくるのです。心理面、身体面などの様々な面で影響を受けてしまうのです。

 

当相談室では災害トラウマの問題に対し、安全かつスピーディに効果を期待できるFAP療法をご提案致しております。災害トラウマによる、様々な症状や日常生活の不安感や抑うつ等についても対応致しております。

 

通常のカウンセリングよりもスピーディにトラウマの問題から解放され、本来ある心の柔軟性を取り戻すサポートさせて頂きます。

最後に

災害トラウマについてご説明を致しました。

当相談室では、災害トラウマの問題を抱える方々へのカウンセリングを行っております。

 

ご希望の方はご連絡を頂ければと存じます。

ご連絡をお待ち致しております。

 

 

<参考文献>

・デビット・ロモ(著)「災害と心のケアハンドブック」,(株)アスク・ヒューマン・ケア,1995年