赤ちゃんは生後3か月目で「頭を持ち上げる、声を出して笑う」、10か月目で「立ち上がる、パパ、ママと言う」、3歳で「三輪車をこぐ、色を区別する」など、個人が成長すればその年齢にふさわしい行動や能力を身につけていると社会(家族、学校、会社、地域社会)は見なしています。それは「常識」といった目に見えない平均点のようなものかもしれません。
この平均点を科学的に分析して基準を作り、身体的側面と精神的側面とを数値化する発達検査が生まれます。検査によって苦手な部分が浮き彫りとなってきます。
ところが身体と精神ともに特に問題がないけれど、社会の中で集団生活や、集中力、不登校、出社拒否などの問題を抱え、目に見えない平均点のせいで生きづらさを抱えておられる方がいらっしゃいます。
●発達検査で見落としてきた部分 ~ソーシャルスキルの発達~
代表的な発達検査には、フランケンバーグの「デンバーの発達スケール」があります。「生後何歳で~ができる」といった上にあげた例のようなものです。
フランケンバーグは身体機能の発達スケールはあるものも、十分な精神機能の発達スケールがないことに着目し、「言語」、「運動」、「社会と個人」という側面からのスケールを考案し、精神の遅れや運動の遅れを早期に発見できるようになります。
ところが、精神と身体の部分は正常値であるものの、社会生活に馴染めず、不適応を起こしてしまう事例に多く遭遇します。そこでアメリカの心理学者レバインは身体でも精神でもなく、ソーシャルスキルの発達に着目します。
それは、2歳を過ぎると現れるという利他的な感受性や行動、能力のことであり「自分は他者(親、友人、社会)からどのように思われているのかしら?」という部分でした。
この研究をさらに発展させたのがジョンソンで「人は乳児期から他人の視線や表情を理解する」ということを「注視実験に」によって証明します。9か月の乳児は大人が視線を移すと敏感に反応し、移した方向を見ることが判明したことで、乳児も他者への関心を持っていることが明らかになります。
その後、メルツォフの新生児の模倣の研究により、人間の脳の中には模倣行動をとる回路(大人が舌をだすと新生児は模倣する、他の子供が泣きだすと一緒に泣く)があのではないかという想定がなされます。さらにソーシャルスキルの発達と利他行動の代表的な実験に動物心理学者プレマックの「アンとサリーの課題」があります。
●「心の理論」とは
「アンとサリーの課題」はコマ漫画からなります」。
①アンとサリーが部屋にいて、サリーはビー玉遊びをしています。
サリーは遊びが終わると、ビー玉をカゴに片づけて出かけます。
②アンはカゴからビー玉を出して遊びます。
③アンはビー玉をタンスの引き出しにしまいます。
④サリーは戻ってきて、またビー玉で遊ぼうと思った。
では、サリーはどこを探すでしょうか?
「カゴの中を探す」が正解となります。
これはサリーの心の中を理解しているという共感能力や想像する能力があるからこそ、「カゴの中を探す」と解答できる訳です。
つまり、他者の気持ち、表情、言葉や行動から心の中を理解できるソーシャルスキルの発達を発見できる実験となります。子どもは4歳ころからこうしたスキルを持ちはじめるといわれています。
ソーシャルスキルの発達や利他行動に着目することで、コミュニケーションや集中力に課題を持たれる方々の行動の理解が深まって来ました。
そしてできないことに着目するのではなく「できること」をより一層応援してゆく治療法が、今日必要とされています。
●発達の成長について
発達は、生まれ持った遺伝的要因と母子関係などの環境要因の相互作用によって進んでゆくものとされています。以前は母性的養育の剥奪を2~3歳で経験すると、パーソナリティ形成に影響を及ぼすという「発達の臨界期」があるといわれていましたが、環境改善や「できること」に着目する視点によって、修正が可能であるものとなっています。
DMS-Ⅳ(精神疾患の分類と診断)までは、その名称がアスペルガー障害とよばれていました。DMS-5より自閉症スペクトラム障害となっています。これらの特徴をお持ちの方の一部には、IQが高くてあるひとつの事に突出した才能を持っている「天才肌」の方が多いようです。最近ではASDの類型化が以下のように類型化されています。
・尊大型
他者に対して見下したような、高圧的な態度をとるタイプ
・孤立型
他者への関心を一切持っていないタイプ
・受動型
自分から関わろうとしないが、他者から話しかけられると受け入れるタイプ。
・積極奇異型
他者に積極的に話しかけ親しくなろうとするタイプ。
自分の話したいことだけ話す。
●ASDの特徴
1.身体言語の欠如:目をあわせない、身振り手振りが理解できない、無表情
2.共感性の欠如:アンとサリーの実験の解答が正しく答えられない、想像力欠如
3.仲間意識がない。人間関係の発展、維持ということに価値を見出せない
4.常同運動:反復的な行動
5.同一性への固執:ルーチン、儀式のようなあいさつ。
異常なほどのきわめて限定された興味、一般的でない対象への強い愛着
多動性と不注意が日常的に持続してしまうことにより、学業、職場での適用できず、それによって発達が妨げられてしまいます。
注意欠陥・多動症/注意欠陥・多動性障害の特徴
以下の内容が6つまたはそれ以上該当し、6か月間持続していること
1.不注意
a.集中できない、見逃し
b.会議や会話などで注意を維持できない
c.注意をそらすものがないのに、聞いていないように見える
d.何かをはじめてもやり遂げることができない
e.時間の管理が苦手でスケジュールを守れない
資料や持ち物の整理整頓ができない
f.学業、宿題、報告書作成、長文の見直しを嫌う
g.ケータイ電話、鍵、財布などをよく紛失する
h.無関係な考えや外的な刺激によってすぐに気が散ってしまう
i.日々の活動で忘れっぽい
2.多動性と衝動性
a.手足をそわそわさせたり、トントンたたく、椅子の上でもじもじしている
b.席についていなければいけない時に、席を離れる
c.授業中の教室などの不適切な場所で走り回る
d.人といても一緒にいることが困難なくらい落ち着きがない
f.しゃべりすぎてしまう
g.質問が終わる前に答えてしまう
h.順番が待てない
i.会話やゲームなどで他人の邪魔をする
知的な発達には問題はないが、読むこと、書くこと、計算することのいずれかが、又はそのすべてが他の知的な能力と比べて著しくできないなどの特徴があります。
学習障害の特徴
文字が書けない、字が読めないなどの問題を、親や教師が発見して介入を試みるが、改善されずに6か月を経過して以下の症状が少なくとも1つ存在します。
1.言葉の発音:的確に発音できず、発音の速度が遅い
2.文章理解:文脈や意味するもののつながりを理解できない
3.文字を書くことができない
4.文法、句読点、段落がまとめられず、思っていることを書くと明確さの欠ける
5.数字、数値、計算の意味がわからない
6.数学的な推論ができない
「発達障害」というコトバには、「自分は平均点もとれない、どうしよう、、、」といった不安、劣等感、孤独感を帯びています。発達が障害されるという表現には、社会集団内で平均点をとるようにと、見えない他者から強制されているような、そんな拘束力を多分に感じさせます。それ程、この言葉は他人指向で利他的であるような気がします。
皆様にも突出した才能があり、その能力や才能に学童期又はそれよりも早く社会が気がつけるシステムがまだまだ社会には不足しているかもしれません。
平均点に力を置いている社会が、その「才能」を埋没させている様にも感じます。
他人指向から自分指向へ切り替えることで、ご自分の唯一無二の個性を尊重し、自由であることやあなた本来の眠っていた才能が発見できるかもしれません。FAP療法はあなたを大切にし、あなたが中心であることを、あなた自身の無意識の声できっとあなたに知らせてくれます。
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